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腸内細菌の役割
2019年1月 6日
近頃、腸内細菌(腸内フローラ)が注目を浴びるようになり、メディアで取り上げられることも増えていますが、改めておさらいをしておきます。
特に腸内フローラ移植の現場では、私たちがどんなことを意識しながら移植に取り組んでいるのか少しでもイメージしていただければ幸いです。
私たちの排泄する糞便の 約80%は水分で、残りの2/3が食べかすや剥がれ落ちた腸の粘膜細胞、そして1/3が腸内細菌という構成になっています。
その腸内細菌には、現時点で分かっているだけでも非常に多彩な役割があることが明らかになって来ました。代謝を司る
1、糖の代謝
2、脂質の代謝
3、食物繊維などの分解
免疫力を司る
1、白血球への指令など
2、他の有害細菌等を排除
3、粘膜バリアを形成
腸と各臓器間の通信を行う
1、脳腸相関
2、腸腎相関
3、膵臓でのインスリン分泌
有用物質の産生
1、短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸、プロピオン酸)
2、エクオール
3、神経伝達物質(ドーパミン、セロトニン)
4、ビタミン(ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンK、葉酸、パントテン酸、ビオチンなど)
5、生体内水素などが知られています。
細菌ごとに得意な分野があり、多様性のある細菌群がが相補的、相互的に上記の役割を担っています。dysbiosis(ディスバイオーシス)
私たちは腸内フローラ移植の際に腸内フローラの検査を行いますが、バランスが乱れているものをdysbiosis(ディスバイオーシス)と呼びます。
ストレスや薬物など、様々な原因でdysbiosisが起こるとされていますが、見方を変えると、宿主の体の状態に応じて、腸内細菌が緊急事態としてそのバランスを変化させ、宿主へのダメージを最小限にとどめてくれていると考えられるケースもあります。
腸内細菌がバランスを変えることで、体調の変化に対応できるものもありますが、長期にわたりdysbiosisが続くと大きな病気のきっかけになることもあります。
また、上述したように細菌群はお互いに得意な部分、不得意な部分を補いながら私たちの健康に寄与してくれています。
ですから、特に有能な細菌のみを取り上げて、その菌を増殖させて薬(またはサプリメント)として投与するというアプローチも一定の効果を期待はできますが、むしろもう既に完成した細菌群のコミュニティーをごっそりそのまま移動させる(移植する)というのが腸内フローラ移植の発想です。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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