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腸内フローラ移植の際の亜鉛の重要性
2018年12月21日
昨日は当院で潰瘍性大腸炎では4例目となる腸内フローラ移植を受けられた方の診察日でした。
合計6回の移植を受けられてから約3ヶ月がたちましたが、正直移植後2ヶ月間は決して劇的に効果があった印象はありませんでした。
移植前から続いている粘血便はやや量は減ったものの、まだ持続していました。
ところがここ1ヶ月でやっと便通も比較的良くなり、下血の量が減り、粘液が出ることはほぼなくなったとの報告をいただきました。
腸内フローラ検査では、術前に比べ依然全体に対するクロストリジウム属の割合がやや高いものの、クロストリジウムの中でのバランスは良くなっておりメンタル、免疫過剰も抑えられていることが示唆されました。
一般的に潰瘍性大腸炎の方には多く見られることですが、亜鉛欠乏症を合併することがあります。この方も著明な亜鉛欠乏を認めていました。この亜鉛欠乏を改善させるために亜鉛を投与していましたが、実は自己判断で内服を中止されていたことが後から判明しました。亜鉛補充がもう少し効果的に行えていれば、症状改善ももう少し早かったのではないかと考えています。
タイトジャンクションとリーキーガット
亜鉛欠乏は腸管バリアの要である「タイトジャンクション」と呼ばれる粘膜上皮細胞同士を密着させる構造物を脆弱にするために、いわゆる「リーキーガット」の状態を起こします。
また、亜鉛欠乏は腸内フローラのバランスをも変化させることがわかっています。亜鉛不足が短鎖脂肪酸の産生に優れるファーミキューテス門の細菌増殖を抑制するため、腸内での短鎖脂肪酸濃度が減少し、それに伴いますます亜鉛吸収率を低下させる悪循環に陥ると考えられています。
腸内フローラ移植では腸内細菌の構成が変わりますが、あらかじめ亜鉛等のミネラル、ビタミンをある程度補充しておくことで、新たな腸内フローラがより早期に粘膜の修復、免疫調整などの仕事を始めてくれると考えています。今後症例を重ねて術前に栄養素の補給をすることの意義について研究していきたいと考えています。
皆さんは亜鉛、普段から意識して摂取していますか? Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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