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健康の要「腸内環境」
2018年2月 5日
腸内細菌叢(腸内フローラとも呼ばれます。近年"Microbiota"とも)は腸内に生息する細菌の集まりのことで、その種類は500種類、数にして100~1000兆個もの菌で構成されています。
ちなみに人間の体を構成する細胞の数が約60兆個と言われていますから、いかに多くの細菌が私たちと共生しているかがわかるでしょう。
重量にすると糞便の80%を占め、1~1.5kgもあります。まさに「一つの臓器」と考えられます。
これらの細菌を分類する上で、便宜上、私たちの体にとって良い働きをする(と今の段階で考えられている)善玉菌や(今の段階で体にとっては有害と考えられている)悪玉菌、そしてどちらにでも変化できる日和見菌に分けることができます。
私たちの健康を考える上で、これらの細菌のバランスが大変重要であることが近年の研究で明らかになっています。
腸には人の体の全免疫システム全体の70%が腸に集中していますが、腸内細菌のバランスは腸粘膜の状態にも大きな影響を与えるため、腸内環境の乱れが様々な疾患との関連があることもわかってきました。(下図)〜腸内細菌と免疫〜
制御性T細胞(Treg : Tレグ)と呼ばれる免疫細胞の一種は、「炎症」や「アレルギー」を抑えるのに重要な役割を果たしますが、この制御性T細胞の働きを腸内細菌が産生する「短鎖脂肪酸」が促進させることがわかっています。
短鎖脂肪酸は私たちが口にする食材の中でもオリゴ糖やイヌリンなどの食物繊維を含む食材が大腸内の細菌により代謝されることで産生されます。
食物繊維の少ない食事は、短鎖脂肪酸の産生が少なくなり腸内環境が悪化することが知られています。〜リーキーガット症候群(腸漏れ症候群)〜
「腸内環境が乱れる」とは小腸の粘膜細胞に障害が起き、本来防波堤の役割を果たす小腸粘膜がその機能を果たせず、未消化の食物がダイレクトに吸収され体内に取り込まれることになります。
この病態を「Leaky Gut Syndrome(リーキーガット症候群:腸もれ症候群)」と呼びます。(学術的にはIncreased Intestinal Permeability)
リーキーガット症候群(Leaky Gut Syndrome:LGS)は必ずしも内視鏡検査では診断することができません。遅延型アレルギー検査のほか、腸内フローラ検査や総合便検査やカンジダ抗体検査などを行うことで総合的に判断することが重要です。
リーキーガット症候群が起こると、未消化のたんぱく質が体内に取り込まれることとなり、このたんぱくがアレルギーを起こすことがわかってきました。
中でも遅延型フードアレルギーと呼ばれるタイプの食物アレルギーでは、一見アレルギーと関係のないような全身の症状と関連しています。
慢性の不調などがあり、ご自身の腸内環境を一度精査してみたい方は是非ご相談くださいね。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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