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新たな自律神経の働き『ポリヴェーガル理論』
2020年12月 9日
先日のブログにはSIBOと絡めて
交感神経系(SNS)と副交感神経(PNS)の話を書きました。交感神経(SNS)と副交感神経(PNS)はお互い拮抗する神経系として構成されており、人間の神経系がストレスに対抗し自己防衛するには、先日のブログに書いたように、
・交感神経による"flight or fight(「戦うか逃げるか」)"反応しかない。
・交感神経優位になると副交感神経が抑制され、それが慢性的に続くと様々な不調の原因となる。
というのがこれまでの一般的な考え方でした。しかし、近年になってこの理論に疑問を呈する考え方が注目されています。
【ポリヴェーガル理論とは?】
Pogesの提唱する
「ポリヴェーガル理論」
では、上記とは全く違う見方をしていきます。
生命の危機が迫った時には、交感神経だけではなく、副交感神経の一種である「迷走神経」の中でも「背側迷走神経系」と呼ばれる神経が活性化し、
これまで考えられて来た
古典的な迷走神経の働きとは異なる
別の働きを介した防御システムが発動すると考えます。その代表的な反応は、
「不動化(フリーズ)」
です。
「不動化」の例として例えば猫に捕まったネズミが、
実際には死んでいないのに、まるで死んだかのように
全く動かなくなってしまうことがこれに当たります。これは危機状況で発動した極度の交感神経系緊張に、背側迷走神経が強いブレーキをかけている状態と考えられています。
この「不動化」という反応こそが、トラウマに対する反応だとPogesは気づきます。
さらに、
「ポリヴェーガル(poly-vagal)」とは
「多重迷走神経」という意味ですが、
不動を司る迷走神経(背側迷走神経)とは別に
発生学的には新しい腹側迷走神経(複合体)と呼ばれるもう一つの迷走神経があることが明らかになってきました。この腹側迷走神経複合体は、
交感神経系、背側迷走神経系による
原始的な防衛反応を抑制するブレーキ機能と、
人と人との関わりを司る脳神経系との複合体と考えられ、
人間の最も適応的な状態である「社会的関わりシステム」を司っているとされています。これらの連動、協働によって、人は人と関わることで落ち着き、表情や声を柔らかくし、「安心」や「安全」「やすらぎ」を覚えることができると言います。
今流行の「マインドフル」な状態とも言えます。
この役割により腹側迷走神経複合体のことをPogesは「社会交流神経」と呼んだりします。【ポリヴェーガル理論を治療に活かす】
トラウマが関与している疾患の治療においては、セラピストが、このポリヴェーガル理論の階層モデルを踏まえてセラピスト自身の状態をわかっていることも重要な要素となります。
トラウマで不動化が固定してしまっている状況をほぐすには、セラピストがクライアントの関係性の中で徐々に腹側迷走神経複合体を活性化させていくと言うことになりますが、セラピストがもし交感神経が活性化した状態でセラピーに臨むとき、
腹側迷走神経複合体優位な時と比べ
攻撃的,あるいは回避的なものになる可能性があります。例えば、セラピストが交感神経系が優位な状態で、
クライアントに次回の面接までの課題と称して次々と宿題を出すようなとき、
クライアントはセラピストを「敵」と無意識的に認識し、
「安心」や「安全」を感じないかもしれません。まずセラピスト自身が、あるいはクライアントと共にリラックスし、安心して、マインドフルな状態にいることが何より重要です。
結局のところ、
セラピスト自らの存在が、社会的関わりシステムを通して、安全感・安心感をクライアントに提供するには、セラピストが自身の腹側迷走神経系を活性化させておいて、安全で安心でき、マインドフルな状況にいることが、どんな治療、技法を使うかより重要と言うことのようです。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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