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ストレスとSIBO
2020年12月 6日
ストレスは交感神経系(SNS)を活性化させますが、特に急性のストレスには"flight or fight(「戦うか逃げるか」)"反応を引き起こします。
SNSは私たちの心拍を速くし、呼吸を増やし、精神的活動を高めます。
いわゆる「戦闘モード」です。
SNSが活性化しているときは、副交感神経系(PNS)が司る「休息と消化」と言う重要な働きが抑制されてしまうため、長期に及ぶSNSの活性化状態は自律神経のアンバランスを引き起こします。また、脳は自律神経系(ANS)および視床下部下垂体-副腎軸(HPA)を介して腸と通信しています(脳腸相関)が、ストレスへの慢性的な曝露が脳腸相関の調節不全をきたし、SIBOを含む腸のさまざまな病気の原因となることが明らかになってきました。
腸と脳は1億本以上の神経繊維で直接繋がっており信号を双方向にやりとりをしています。中でも主に迷走神経がその調節を担っています。
慢性的なストレスは、この迷走神経の働きを低下させ、胃液分泌、腸管蠕動、粘膜透過性、粘膜血流など、多くの消化管における生理機能に影響を及ぼします。胃腸の大蠕動(MMC)は、別名「おそうじ蠕動」とも呼ばれるように、食物、バクテリア、その他の破片を小腸から大腸に移動させることで、小腸を清潔に保っています。しかしSIBOでは、この 大蠕動(MMC)の機能障害を伴います。
さらに、ストレス下で分泌されるコルチゾール(ストレスホルモン)は血糖値を上昇させ、ストレッサーに続いて血糖値を低下させることとなり、結果として頻繁に食べたいという欲求を起こさせます。
MMCは空腹時に効果的に働くため、頻繁に食べるとMMCがリセットされ、うまく働かなくなります。
さらに、ストレスは胃酸の分泌を減らし、小腸内の細菌のコロニー形成を増加させます。SIBOは再発の多い疾患とも言われますが、その理由の一つにこのストレスに対する取り組みが不十分であることが考えられます。
ですから、SIBOの治療において、再発を防ぐためにもうまくストレスに対処する必要がありますが、自身のストレスには案外気づいていない人も多いのが実情です。
身体は正直です。いろいろ対処しても改善しない場合は身体の声に耳を傾けて、自身のライフスタイルや考え方の癖に注目してみましょう。
SIBOの治療においては「除菌」が注目されがちですが、むしろ小腸で増殖した菌を除菌することよりも、なぜ増殖したかを常に考えながら、ストレスマネジメントにもしっかり取り組むことが再発予防の観点からでも重要です。Photo by Christian Erfurt on Unsplash
Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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