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特殊菌液を用いた腸内フローラ移植について②
2018年6月15日
前回は、特殊菌液を用いた腸内フローラ移植の潰瘍性大腸炎に対する有用性について書きました。
近年、腸内細菌に関する研究が飛躍的に進んだことで、様々な疾患が
dysbiosis(腸内環境の乱れ)
と関連することが明らかになって来ました。ここには記載されていませんが、最近ではうつや多発性硬化症、パーキンソン病などの精神神経系疾患との関連も示唆されています。
そこで注目され始めたのが「便移植」です。(学術的には「糞便微生物移植」または「糞便細菌叢移植」とも。英語ではFecal Microbiota Transplantation : FMT)
私たちは、「腸内フローラ」という言葉が浸透して来たこともあり「腸内フローラ移植」と呼んでいます。
腸内フローラ移植の重要なポイントとして
健康なドナーの腸内細菌を効果的に生着させる
ということが挙げられますが、この問題がクリアできれば、dysbiosisに起因する疾患の治療法としての可能性が広がることになります。
通常、腸管の上皮細胞には、簡単には腸内細菌と接触しない分子機構(分泌型IgA、抗菌ペプチドなど)が備わっており、選ばれた細菌のみが選択的に粘液層の中への侵入が許されます(colonization resistance)。
単にドナーの腸内細菌を入れるだけではなかなか簡単には菌が定着(生着)しないことが多いのです。
ですから効果的な移植を行うには、このcolonization resistance機構を介さず生着させる工夫が必要なんですね。
この工夫に関してはまた追々アップしたいと思います。
当院でも特殊菌液を用いたFMTを始めて半年以上が経過しましたが、多岐にわたる疾患を経験して来ました。中でもうつの方に対する効果を実感しています。脳腸相関という概念がありますが、思った以上に相関していることを実感しています。(今後改めて統計を取り公表したいと考えていますのでしばらくお待ちください。)
元々はわたし自身が某大学病院で従来の方法によるFMTを受けたことが、当院でも腸内フローラ移植を行っている理由ですが、残念ながら大学でFMTを受けた時は効果は得られませんでした。
しかし投与する菌液の生成方法を工夫することができれば治療効果を上げることができるのではないか。。。。?とずっと考えていました。とはいえ、具体的にどう工夫すればいいのか、なかなか思いつかずにいたところ偶然知ったのが今の特殊菌液の存在でした。
某大学病院での経験もありましたから最初は半信半疑でしたが、実際に特殊菌液での移植を自分が受けたり、実際によくなられる患者さんの姿を見たりして、最終的に腸内フローラ移植を当院でも取り入れることになったという経緯があります。
その効果を発揮するメカニズムの解明など、まだまだ未解決の課題もありますが、安全性が高く、従来の方法より効果が期待できる腸内フローラ移植を、より多くの方にまずは知っていただくために今後も啓蒙活動を行なって行きたいと考えています。
ご関心のおありの方は一度ご相談ください。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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