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過敏性腸症候群と腸内細菌叢

2018年1月 2日

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過敏症腸症候群(IBS)は、
「腹痛あるいは腹部不快感が1ヶ月につき3日以上あるものが3ヶ月続き、
その腹痛あるいは腹部不快感が、
①排便によって軽快する、
②排便頻度の変化で始まる、
③便性状の変化で始まる、
の3つの便通異常の2つ以上の症状を伴うもの」
と国際的診断基準において定義されています。

従来、IBSは心身症一つとして位置づけられ、心理的ストレスにより症状の増悪が認められることからストレスによる要因が強い疾患と考えられていました。

しかし、腸内細菌の研究が飛躍的に進歩し、近年ではIBSと腸内細菌叢との関連も注目されるようになってきています。

「脳腸相関」と呼ばれる脳と腸の深い関連から考えると当然のことと言えますが、引っ込み思案のマウスと社交性のあるマウスの便を入れ替えると性格が逆になるという実験からもわかるように、腸内環境と性格や感情が深く関連しており、うつや心気症に伴うことの多いIBSが心理的ストレスによる症状とされてきた事も理解できます。

IBS患者の腸内細菌叢では、健常者よりもLactobacillusならびにVeillonellaが多い事が分かっています。さらにIBS患者では健常者よりも便中有機酸において、酢酸、プロピオン酸、総有機酸濃度が高く、その重症度は酢酸、プロピオン酸量が多いほど重症化する事が明らかになっています。(実験医学 Vol.32-No. 5 2014, p117)

そのほか、健常者と比較したIBSの腸内細菌の特徴としてBifidobacteriumの減少やLactobacillusの増加などが報告はされていますが、IBSの研究症例数がまだ少なく決定的な結果が得られたとは言えません。

またIBS患者の多くは、急性胃腸炎感染歴や抗生物質内服歴のある人が多く、食生活の他に抗生剤使用歴などが腸内細菌を変化させる大きな要因と考えられています。

食文化や抗菌薬の使用の仕方が異なる国同士では腸内細菌叢が異なるため、IBSにおける腸内細菌叢も異なると考えられ、まずは我が国のIBSの腸内細菌叢の特徴を明らかにする事が求められています。

IBSの決定的なフローラバランスの特徴がまだ明らかになっていない現段階では、特定のプロバイティクスが効果があるとまでは言い切れません。しかし、腸内細菌と脳腸相関を軸とした生体機能の関連は、ストレスによる細菌増殖や病原性獲得、腸内細菌によるストレス感受性の変化というところまで解明が進んでおり、近い将来特定の細菌を投与することでIBSを含むDysbiosis(腸内細菌叢の乱れ)関連疾患の治療に貢献するかもしれません。

IBSに対する腸内フローラ移植(FMT)の可能性

IBSにおけるBifidobaiteriumの減少などある程度の特徴が示唆されていものの、まだ決定的なフローラバランスの特徴は解明されたとは言えません。

また、異なる細菌同士の相互作用、情報交換などまだ未知の領域が多くある事を考えると、健康とされる腸内細菌叢(腸内フローラ)そのものを別の個体の腸内への移植する事が、現段階で効果のある治療法の一つとして期待されています。

野生のコアラは、生まれすぐに母親の便を食べる習性がありますが、これはコアラ特有のユーカリを消化する酵素を持った腸内細菌を取り入れるために必要不可欠な習性です。

JR芦屋駅から徒歩4分のルークス芦屋クリニック(内科・消化器内科・心療内科)の行う「腸内フローラ移植」では、ドナーのフローラが生着しやすくするために特殊な加工を施した「移植用調整液」を使用する事で、高い生着率を実現しています。

実際に腸内フローラ移植臨床研究会に所属する関連施設において、今までにこの方法で移植を受けた過敏性腸症候群の方達では、移植によるドナーの菌叢の高い生着率(90%以上)、高い症状改善率(90%以上)を示しています。

今後、さらに高い精度でフローラを生着させ、安定的に治療効果を示すためにも経験を重ねていきたいと思います。
関心をお持ちの方はお気軽にご相談くださいね。

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