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潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん:UC)とは?
2024年10月27日
潰瘍性大腸炎は厚生労働省が指定する難治性の炎症性腸疾患(腸の粘膜の慢性的な炎症によりびらんや潰瘍ができる腸疾患)の一つです。
近年、日本国内では患者数は増加傾向にあります。原因はまだ十分には解明されていませんが、免疫システムの異常が関係していると考えられています。男女とも20代という比較的若年層で発症するケースが多いですが、50代以降にも発症のピークがあり、小児から高齢者まで幅広く発症すると言われています。潰瘍性大腸炎の症状
病状が活動期の時には血液が混ざった下痢や粘液便、腹痛や発熱を伴うことがあります。寛解(症状が落ち着いた状態)と再燃を繰り返しながら慢性の経過をたどることが多く、大腸内視鏡が行える医療機関で診断を受けることが重要です。
確定診断をするには血液検査や便の細菌検査に加え、大腸内視鏡検査などによって行ないます。特に大腸内視鏡検査では病気の範囲や重症度、がんのリスクを知るために重要な検査の一つです。潰瘍性大腸炎の治療法(標準的な治療)
近年、潰瘍性大腸炎に使用できる薬の種類や数が増え、下血や腹痛などの症状の改善だけでなく、大腸粘膜傷害の治癒を目指せるようになりました。炎症を抑える効果がある5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤やステロイド、免疫調整薬(チオプリン製剤等)のほか、近年では免疫のバランスを整える生物学的製剤(抗TNF-α抗体製剤等)などが開発され、以前に比べ予後が改善しています。
上記の薬物療法の他に慢性的な炎症に関わっている白血球の除去を目的とした「血球成分除去療法」も選択肢の一つです。
これらの内科的治療が奏効しない場合や大量出血、高度の腸管狭窄、がんの合併、腸穿孔、中毒性巨大結腸症を合併した場合などでは外科的に大腸全摘術が行われることがあります。潰瘍性大腸炎の治療法(当院における治療方針)
当院では、従来の標準的な治療で再燃を繰り返す患者さんに以下のような治療を行なっています。
<腸内環境を整える>
潰瘍性大腸炎をはじめとする「炎症性腸疾患」では、腸内環境が乱れていることが知られています。具体的には腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れ(ディスバイオーシス)や、腸粘膜が炎症により傷つき、容易に異物が体内に侵入してしまう状態(リーキーガット、腸もれ)の合併が認められます。
このような状態になると、図のように腸の粘膜の細胞間に隙間ができ、粘液も減少することから様々な炎症の原因物質が体内に入りやすくなってしまいます。また、腸内細菌が関与している食物の代謝がうまくいかなくなるため、私たちの健康に重要な栄養素が不足することになります。●栄養療法
潰瘍性大腸炎の方では亜鉛やビタミンDなどの重要な栄養素が不足していることが多く認められます。傷ついた腸の粘膜が修復され易くするためにも不足したビタミンやミネラルが補充できる食事に加え、必要に応じてサプリメントを投与します。
●カンジダ治療
腸内細菌叢の乱れや腸粘膜の障害の原因の一つとしてカビの一種である「カンジダ」の異常増殖があります。カンジダはもともと常在菌の一種であり、免疫システムがしっかりしていると悪影響を与えることはないのですが、一度免疫システムに異常が生じるとカンジダが増殖して、腸内細菌叢の乱れや腸粘膜を傷つける原因となります。尿中有機酸検査などにより、腸管内のカンジダ増殖が認められる場合にはカンジダ菌を減らすためのカンジダ菌治療を行います。
従来の標準的な治療ではコントロールが困難であった潰瘍性大腸炎の方が栄養療法とカンジダ菌治療を行うことで寛解の維持できることも稀ではありません。●腸内フローラ移植
上記でも改善が見込めない場合は腸内フローラ移植も選択肢の一つです。前述のように潰瘍性大腸炎には腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオーシス)を伴いますが、特に腸内細菌叢の多様性がもともと低い場合などでは、カンジダ菌治療のみでは腸内細菌叢の乱れを改善させることが難しい場合もあります。
このような場合に、腸内フローラ移植(当院ではNanoGAS®︎-FMT は腸内細菌叢の多様性を高め、潰瘍性大腸炎の根本的な原因と考えられている免疫システムの異常を改善させることが期待できます。(潰瘍性大腸炎に対して従来の便移植法では「先進医療B」として複数の大学病院で臨床研究が現在行われています。当院が行なっているNanoGAS®︎-FMTとは異なる便移植方法です。)これまでに腸内フローラ移植臨床研究会全体では2017年の研究会発足以降潰瘍性大腸炎42例、そのうち9例を当院で潰瘍性大腸炎に対する腸内フローラ移植を行っています。
当院の症例9例のうち7例は寛解を維持し社会復帰をされています。
潰瘍性大腸炎やクローン病のような炎症性腸疾患で標準治療でなかなか良くならない場合や、周囲の理解が得られず思い悩んでいらっしゃる方は一度ご相談ください。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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