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腸内細菌と迷走神経

2024年10月29日

あくまでもこれは経験的な話ですし、私の主観も大いに入っている事案なのでそのつもりでお読みいただけると幸いです。

日々、腸内細菌叢(腸内フローラ)の検査結果を分析していると、腸内細菌の多様性が高い人、中でも迷走神経の働きに影響を及ぼす腸内細菌の割合が多い人では、自身の人間関係も比較的円滑でいい関係性を築きやすい人が多いように感じています。
その話をするにはまず迷走神経に関する新しい理論「ポリヴェーガル理論」についての話が必要です。

つまり、ポリヴェーガル理論で言うところの「腹側迷走神経系」が活性化し「指揮者」としての働きがうまくいっている時、交感神経系も背側迷走神経系も程よく活性化し、これらがうまくハーモニーを奏でることができます。

この場合、社会性がうまく発動され、豊かな人間関係を築きやすい状態と言えます。図で言うと黄色い部分の「社会的交流」が円滑にいく部分が広い場合がこの状態にあたります。

また腸内細菌の多様性が高く、迷走神経をはじめとする自律神経の働きに関係するClostridium cluster ⅨやClostridium clusterⅩⅣabなどの程よい比率やMegamonas funiformisの有無が迷走神経の中でも特に社会性に関係する腹側迷走神経の活性とリンクします。

当院では独自の腸内フローラ検査を活用し、必要に応じて腸内フローラ移植(便移植、FMT )の必要性や適応について判断するようにしていますが、併せて上記のような菌群の状態を見ることでその方の迷走神経の状態を推測しています。

昨年行った自閉スペクトラム症(ASD)に対する腸内フローラ移植(便移植、FMT)の臨床研究においても、患児たちの腸内フローラにおける上記細菌群のバランスには偏りがあり、迷走神経の働きが低下していることが疑われるケースが多くありました。

その臨床研究では腸内フローラのバランスが変わり、多様性が増え、先述の細菌群のバランスに変化が起こるのに伴い、患児の社会性が改善したことが確認されています(近日論文発表予定)。また、これらの患児に多く認められていた便通障害(便秘や下痢)も同時に改善したことも確認されたことは腸脳相関を理解する上でとても意味のある結果だった言えます。
腸内細菌のバランスが整うことで、腸脳相関の大きな一翼を担う迷走神経の働きにも影響し、結果として社会性が高まり、例えば「癇癪」が減ったり、「我慢」ができるようになったり、あるいは「相手の気持ちを理解する」ことが少しずつできるようになったりといった変化が認められました。

おそらくこれは小児に限ったことではなく、大人でも腸内細菌の最適化で同様の変化が期待できるのではないかと考えています。
迷走神経でも特に社会的交流とも深く関係しているとされる「腹側迷走神経系」の働きをより良い状態にするためにも、腸内細菌の多様性を高め、程よいバランスが維持できると、その人の人生がより豊かになるのではないかと感じています。

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