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潰瘍性大腸炎に対する腸内フローラ移植(便移植)の枠を広げます
2024年10月28日
潰瘍性大腸炎では慢性的な大腸粘膜の炎症を繰り返すことが多く、その活動期にはQOL(生活の質)を非常に低下させてしまいます。特に成長期や働き盛りの若年層での発症が多く、潰瘍性大腸炎を抱えながら生活していくことは、その人の人生を左右するような岐路と重なることもあり非常に大きな影響を与えますし、社会的な損失も計り知れないものがあります。
近年、潰瘍性大腸炎の治療に使える生物学的製剤などの新しい薬が開発され、以前に比べ予後が改善しています。しかしその一方で内科的な治療が奏功せず、外科的に大腸を切除しなければならないケースがまだまだ多くあります。
2023年より順天堂大学を中心とした複数の大学病院が中心となり、こういった難治性の潰瘍性大腸炎に対して「抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」(便移植:FMT)の臨床研究が実施されています。これは国が定めた「先進医療B」という枠組みで行われるものです。
このFMTでは3種類の抗菌薬(アモキシシリン、ホスホマイシン、メトロニダゾール)を使い、できるだけ腸内に生息する腸内細菌を減らし、健康なドナーからもらった糞便を下剤で腸内を洗浄した後に大腸内視鏡を使って腸内に投与するという方法です。
当院では2017年の腸内フローラ移植臨床研究会発足時より、上記の大学病院で採用されている方法とは異なる新しい方法の腸内フローラ移植( Nano GAS®︎-FMT)を取り入れ、抗菌薬や下剤などの前処置や内視鏡検査を必要としない治療を行ってきました。
これまで、「健康な人の腸内フローラが治療に使える」という認識が一般の人のみならず、医師の間でも懐疑的な見方が多かったこともあり、潰瘍性大腸炎を患う患者様の主治医の理解が得られず腸内フローラ移植を受ける機会を逸することがありました。しかし上記のような大学病院での動きもあり、徐々に医療従事者における認知度が広がってきたことで、当院も腸内フローラ移植における医療連携が取りやすくなってきました。
このような背景もあり、この度当院では潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患に対する腸内フローラ移植の受け入れ枠を広げることになりました。今後、難治性の潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患で悩まされている方に対して、広くご相談を受け入れ、必要な方にはより質の高い腸内フローラ移植が提供できるよう体制を整えていきます。
内科的な治療の効果が乏しい方々が1日でも早く安心できる日常を取り戻していただき、一人でも多くの方が大腸全摘などの外科的な処置を回避できるためにお役に立てるよう願っております。
これまでにも当院では9人(うち1人は大腸全摘後の回腸嚢炎)に対して腸内フローラ移植(NanoGAS®︎-FMT)を行ってきましたが、うち7人は寛解を維持し社会復帰をされています。
当院も所属する研究会全体では2017年以降、治療評価のできる潰瘍性大腸炎21例の効果は、著効8例、中等度効果あり3例、軽度効果あり6例、変化なし2例、悪化2例(一時的なもので後に改善)となっています。つまり軽度効果あり以上の人の割合は、まだ人数が少なく統計学的には有意なものとは断定できないものの、その奏功率は81%と高いものとなっており、これまでに報告されてきた従来の方法のFMTよりもNanoGAS®︎-FMTの効果が高い可能性が示唆されています。
<当院での潰瘍性大腸炎に対する腸内フローラ移植(NanoGAS®︎-FMT)の特徴>
潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患に対する腸内フローラ移植は、他の疾患に対する腸内フローラ移植とは違い、FMT を行うことで一時的に炎症が増悪することがあります。しかし適切な処置(必要に応じて入院の上)を行うことで症状の改善が期待でき、腸内細菌叢の乱れを改善させることが可能です。
1.ドナーの選定
これまでに潰瘍性大腸炎の腸内フローラ移植で実績のあるドナーをドナーバンクから選びます。その患者様の腸内フローラのバランスによっては他のドナーの成分も一定量ミックスさせたりしながら最適なバランスの菌液を調整します。2.低濃度から開始
NanoGAS®︎-FMTでは元々複数回の移植を行いますが、最初の移植は濃度を低く抑えた菌液を使います。しかし潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患で腸内にまだ比較的炎症が強いような場合は、さらに濃度の低い移植菌液を使い、できるだけ「リバウンド」と呼ばれる免疫反応を起こさないような工夫を行いながら移植処置を行います。3.事前のNanoGAS®︎水
FMT前よりNanoGAS®︎水を従来の量よりも多めに摂取していただき、FMT前に腸管の炎症を少しでも抑制しながらFMTに備えます。口腔内の問題を伴う場合は特にNanoGAS®︎水を口腔内のケアにも使用していただきます。4.カンジダ治療
尿中有機酸検査などでカンジダ菌の異常増殖を認めた場合は予めハーブサプリメントを使ったカンジダ治療を行い、必要に応じて6回の移植の途中でも同様にハーブサプリメントを内服していただきます。5.必要に応じて入院
NanoGAS®︎-FMTでは原則入院を必要としませんが、潰瘍性大腸炎の場合は非常に稀ではありますが、FMT後に炎症が一時的に増悪する場合があります。そのような場合は連携病院との連携を図り、必要に応じて入院治療も行いながらFMTを行うことがあります。もし潰瘍性大腸炎で長年お悩みの場合は、どうぞお気軽にお問合せください。
Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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