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微生物循環とFMT(腸内フローラ移植)

2024年10月 9日

神戸市の兵庫みなと動物病院院長で、動物にも腸内フローラ移植(FMT)を行っていらっしゃる豊福祥生先生のnoteを読ませて頂き、非常に共感したので今回シェアします。

豊福先生とは腸内フローラ移植臨床研究会でご一緒させていただいていますが、今回の学術大会(第8回、2024年9月22日開催)でASD(自閉スペクトラム症)に関する発表をご覧になられて、その結果に希望と不安を感じられたようです。
豊福先生のおっしゃる希望とはASDに対する新しい方法による腸内フローラ移植(NanoGAS®︎-FMT)の臨床研究において、非常に効果が高く、しかも有害事象がなかったという「有効性」と「安全性」についての希望とのことです。
今回の臨床研究の内容を要約すると、
30名のASD児を対象として、新規FMT法を施行し、その結果をASDの検査法であるSRS-2によって、FMT施行前後のASDの重症度の変化を評価したところ、FMT施行前においては、研究対象者30名のうち、28名が重度、1名が中等度、1名が正常域でした。FMT施行後24週目には、重度であった19名、及び中等度であった1名は、中度、軽度、及び正常域に移行したと言うものです。
即ち、新規FMT法によって、70%のASD児が、より軽症域に移行することが明らかになったのです。
また、有害事象は1例もなく、少なくともFMT開始後30週において安全性は担保できるといえるでしょう。
FMTの目的は腸内フローラの乱れ(多様性の低下、ディスバイオシス(dysbiosis))を是正し、それに関連する症状を軽減させると言うものです。つまり今回の臨床研究ではASD児に認めたdysbiosisを是正したところASDに特徴的な症状が軽減したと言うことです。
以前よりASD児の腸内フローラはそれ以外のケースに比べてdysbiosisを合併することが多く、特にASD特有の腸内フローラの特徴を持つことも明らかになってきていました。
「脳腸相関」と言う言葉が一般にもよく知られるようになり、腸内環境の状態が脳の働きにも大きな影響を与えると言うことが次第に科学的にも証明されるようになったこの時代に、dysbiosisをいかに是正するかが大きな課題となっています。
さらに脳と腸だけではなく、腸内細菌はさまざまな臓器とも連絡を取り合い、体のバランスを保とうとしていることも明らかになっています(腸肝相関や腸腎相関、腸皮膚相関など。いずれもその主体は腸内細菌であることもわかってきました)。
人間の有史以来、文明を発達させるごとに腸内細菌の多様性は減少しつつあり、ひいてはdysbiosisを伴うケースが多くなっていると考えられています。特に日本でも戦後「超加工食品」ともいえる食材が溢れるようになり、ますますその傾向は強くなっていると言えます。
本来は「腸活」の一環で食事を腸内環境にやさしいものに変えていくと言うことで、腸内環境は比較的容易に整えることができた人も多かったはずですが、昨今の患者さんたちの腸内フローラ検査の傾向を見ていると、単なる食事療法や生活習慣の見直しだけではなかなか結果に結びつかないくらいdysbiosisが目立つケースが多くなっています。
このことが豊福先生の抱かれた「不安」の種にも繋がっているようです。
※詳しくは豊福先生のnoteをご参照ください

どんどん便利になっていく人間社会において、微生物との共生の重要性については蔑ろにされてくることが多かったでしょうし、むしろのれらの微生物を「バイ菌」と見做し、排除いうしようとしてきたのがこれまでの人間の歴史です。
元々微生物は私たちの生活に欠かせない存在であり、その微生物が例えば、土壌⇨食物⇨人の口腔内⇨腸内⇨糞便⇨土壌というような循環の中で私たち人間やさまざまな植物や動物とも有機的に繋がりエコシステムを形成しています。
しかし、現代社会はこの微生物の循環をさまざまなところで分断してしまっています。
この微生物循環の分断はdysbiosisの一因だと考えられています。
本来、この微生物循環を取り戻すことが重要なのですが、時にはそのような悠長なことも言っておられないこともあり、どうしてもFMTのような治療が注目されるようになっています。
豊福先生が
「より多くの方がFMTを知って、希望を感じてもらうことが叶えば、菌に対するイメージも変わって、菌に優しい世界になるのでしょうね。
そしていずれは、FMTを受けずとも、環境から菌を受け取り、食生活で菌を育て、次の世代に菌を受け継ぐ、そんな世界がやってくるかもしれません。」
と仰るように私もそのような世界を願っていますし、元々私たち人間はそれをいつの日か可能にできる素晴らしい叡智を持ち合わせていることも信頼しています。

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