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食物不耐症と腸内細菌

2024年9月17日

当院では過敏性腸症候群(IBS)小腸内細菌異常増殖症(SIBO)が疑われる方が多くいらっしゃいます。
しかし一言にIBSやSIBOと言っても症状の個人差は大きく、またその治療に重要な食事療法にしても全ての方に有用な食事療法は存在しません。
これまで、一般的にIBSやSIBOが疑われる際には低FODMAPやグルテンフリー・カゼインフリー食(GFCF)などの食事療法が推奨されることが多くありましたが、実際にこれらの食事療法を実践してもその効果を感じていらっしゃる方はかなり限定的です。

昨年発表された論文(1)では、IBSやSIBOなどのなかなか良くならないお腹の不調の背景には、様々な食物不耐症や吸収不良が関係してる可能性を示唆しています。
つまり、生体アミン (主にヒスタミン) を含む糖類 (乳糖および果糖) やタンパク質 (グルテン) がこれらの症状を引き起こしている可能性があり、この研究ではIBS患者の約80%が当てはまるとしています。

具体的には、セリアック病(CD)、果糖吸収不良(FM)、ヒスタミン不耐症食物不耐症(HIT)、乳糖不耐症(LIT)などIBSやSIBOの症状と関連するとのことですが、中でも特に若年層や女性のIBS/SIBOの場合はこれらの関与が大きいとされており、またH. ピロリ菌の感染も増悪因子となるようです。

これらの診断には果糖や乳糖を摂取した後の水素呼気検査のほか、血清中のDAO(ヒスタミンを分解する酵素)測定、トランスグルタミナーゼIgA抗体測定などが参考になります。(現在当院ではこれらの検査は行なっていません)

またこの論文ではそれらの食材を特定して、それらの食材を長期に渡り除去していくという食事療法を推奨しています。
確かにIBSやSIBOの方々には様々な食物不耐症が合併していることは私も経験的に納得できます。しかし実際にはそれらの食材が特定できたとしても厳格に除去を継続していくことに困難を感じている方が多いのが実情です。

私のこれまでの臨床経験(つまりエビデンスレベルとしてはまだ低い)からは、これらの食物不耐症の背景にはおそらく腸内細菌の多様性の低下が関与していると考えています。
本来私たちは小腸から分泌される自らの消化酵素の力で食べ物を分解する以外に、腸内細菌が持つ酵素の力を借りて食物を代謝し、その代謝の結果産生される栄養素を私たちは活用しています。つまり自分の酵素と腸内細菌のハイブリッドで食物を代謝(消化)しています。
これら代謝のリレーにおいてバトンの担い手となる腸内細菌の種類が減少することで、食物のバトンリレーがストップし、代謝(消化)が不十分なまま大腸に到達し、ガスや毒素などが発生する原因となっているのではないかと考えています。

私たち現代人、中でも特に都会で生活する人は食物繊維を消化する腸内細菌が激減しているという論文も最近発表されています(2)。
これまでに我々の提供する腸内フローラ移植(NanoGAS®︎-FMT)でIBSやSIBOの症状が実際に改善している人たちが少なからずいらっしゃることから考えると、腸内細菌の多様性を増やすことで食物不耐症の改善し、その結果IBSやSIBOの症状が改善したのではと思われます。
まだこれから研究を重ねていく必要がありますが、IBSやSIBOの方には腸内細菌からのアプローチもとても重要だと感じており、ストレスの高いストイックな食事療法から解放される方が少しでも増えればと願います。

1)A personalized management approach in disorders of the irritable bowel syndrome spectrum. Schnedl, Wolfgang J. et al. Clinical Nutrition ESPEN, Volume 57, 96 - 105
2)SCIENCE, VOL. 383, NO. 6688、15 Mar 2024

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