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過敏性腸症候群と自己臭症
2024年4月 4日
当院には、
「おならが臭くて気になる」
「ガス(おなら)が多くて困る」
と受診される患者さんが少なくありません。おならを構成するガスの成分は、私たちが飲み込んだ空気が約7割で残りの3割は腸内細菌が産生したガスといわれています。
ほとんどのガスは腸管に吸収されますが、吸収されないとおならとして体外に出て行きます。腸内細菌のバランスが乱れたときや、あまり噛まずに早食いをしたとき、ガスを発生させやすい食事をしたとき、無意識に空気を飲んでしまう呑気症などでもおならが増えます。
しかし、実際の臨床現場では本当にガスが出ているかどうかの区別は容易ではないため、過敏性腸症候群(IBS)のガス型と自己臭症(自臭症)の鑑別が難しいことがほとんどです。また、自己臭症の中にも腹痛や腹部膨満感、下痢、便秘といったIBSの症状を併せ持つ人が半数近くいるという研究もあり、両者の病態は密接に関係していると考えられます。
もともとIBSの症状はストレスが深く関与していることが知られていますが、自己臭症があると、人混みや密室で「おならが出るのではないか」という不安や緊張が腸の蠕動運動に影響し、より膨満感やガスを増やしてしまうという悪循環が起こることがあります。
さらに、IBSには内臓の感覚過敏を伴うことがあり、通常は腹部の膨満感は感じないようなガスの量でも敏感に膨満感として感じてしまう傾向があります。最近の研究ではIBSは腸内細菌のバランスの乱れが関与していることもわかってきましたが、これは私たちが日常的に口にする食事の内容も大きく関与していることを示唆しています。
<自己臭症とPATM>
あまり聞き慣れないかもしれませんが、IBSや自己臭症に関連した疾患概念で最近注目されているものとしてPATM(パトム:People AllergyTo Me)があります。
PATMとは、自分以外の周囲にいる人がくしゃみやのどの違和感を訴え、まるで自分がアレルギー症状を引き起こす原因のようになって周囲の人に影響を及ぼす状態のことを指します。
本人が自己臭に敏感になり分かることもありますが、本来は自覚症状が乏しいことが多く周囲の人に指摘されて気づくこともあります。
皮膚ガステストをして実際に皮膚から出ているガスを同定している施設もありますが、今のところ一般的な検査ではありません。
PATMの原因の一つとして腸内環境の乱れが指摘されており、やはりIBSと同じように腸内環境を整えることが重要と考えられています。
もしこのような症状でお困りであれば、下記のようなことを見直してみてはいかがでしょうか。<食事に関して>
1、食物繊維が多いもの
本来、食物繊維は腸内環境を整えるために重要なものですが、ガスが多すぎて困る人は食物繊維をとりすぎていないか見直してみましょう。食物繊維の量を減らすと軽減する場合があります。2、肉類中心の食事
戦後日本の食卓にも急激に増えた西洋風の食事は、私たち日本人にとっては動物性のタンパク質や脂質が多く腸内細菌のバランスを乱す原因となりやすく、おならが臭くなる傾向にあります。海に囲まれて暮らしてきた日本人は海洋性の食材や野菜を中心とした食事との相性がよく、症状が気になるのであれば普段の食事を見直してみましょう。3、精製された糖質を多く含むもの
お砂糖を多く使ったお菓子や小麦製品、人工甘味料を使った食材の過剰摂取はカンジダ菌というカビの増殖を促進する傾向があります。元々カンジダ菌は常在菌ですが、異常増殖すると腸内細菌のバランスを乱す要因となります。<普段の生活に関して>
1、ストレス、睡眠不足
長期にわたるストレスや睡眠不足があると、自律神経のバランスが乱れ、消化管の蠕動運動を司る副交感神経(迷走神経)の働きが低下し、ガスが停滞したり膨満感のほか、下痢や便秘のような便通異常を起こすこともあります。。2、早食い
よく噛む人は唾液が多く分泌され、消化管の蠕動運動や胃液や消化酵素の分泌を促します。それに比べて噛む回数が少なく早食いの人は、これらの働きが抑制された状態であるため、消化吸収の効率を下げてしまいます。よく噛むことが消化の第一歩であり、早食いの傾向のある人は見直してみましょう。3、便秘
食べたものが腸の中に長くとどまれば、腸内細菌による腐敗が促進されるためガスが発生しやすくなります。水分をしっかり摂ったり普段から運動の習慣を持つなどして便秘の解消を心がけましょう。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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