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産土神社と腸内細菌
2024年1月29日
数年前から私の兄は頻繁に神社やお墓参りをするようになりました。はじめはお互い50歳をすぎ、元々信仰心の厚い方では無かったであろう兄もそういう歳になったのかくらいに思っていましたが、ちょっとした兄との会話の中でこんなことを聞かれたのです。
「お前、自分の産土神社ってどこか知ってる?」産土神社という言葉は聞いたことはありましたが、具体的にはどんなものなのかは説明はできませんでしたし、氏神様との区別も知りませんでした。
兄によると、自分の産土神社を知ってから足繁くお参りするようになり、これまでの体調不良や家族の問題にも解決の糸口が見え始めたと言います。
「産土神は、神道において、その者が生まれた土地の守護神を指す。その者を生まれる前から死んだ後まで守護する神とされており、他所に移住しても一生を通じ守護してくれると信じられている。産土神への信仰を産土信仰という。」(Wikipedia)とすると産土神社はその産土神がいらっしゃる神社ということになります。
その兄の言葉から自分の産土神社はどこだろうと疑問に思った私は、兄から紹介された方に私の産土神社を調べていただいたところ、私が幼少期から慣れ親しんできた氏神神社と産土神社は同じであることが分かりました。実家に程近いこの神社は幼少期から近所の友達との遊び場としてよく出入りをしていた場所で、この神社を囲む木々は鬱蒼と生い茂り、参道の左右にある小さな池には蓮の葉が広がっていました。私は幼少期にこの境内で鬼ごっこやボール遊びをする中で土に触れ合う機会も多く、池に張り出した大きな木の枝から糸を垂らしてどろんこまみれになりながらザリガニ釣りをしていたのを懐かしく思い出しました。
幼少期にこの産土神社をはじめ、近隣の田圃や大自然の中で土に触れる機会も多くありました。ですからおそらく私の腸内細菌が幼少期にある程度生着し、固定化される過程で、産土神社をはじめとする実家の周りにある田圃や自然とのふれあいの中で、土壌菌などの微生物が大きな役割を果たしてくれたと思われます。
腸活がブームとなっている昨今、腸内細菌が私たちの健康に果たす役割がとても重要であることが知られるようになってきました。その中で幼少期にできるだけ多様な菌と触れ合うことが、将来大人になった時の健康維持にとって重要で、特に様々な種類の菌が程よいバランスで棲み分けていることが「多様性が高い」腸内細菌と言われ、これが崩れて「多様性が少ない」状態になると様々な疾患リスクが高まることが知られるようになってきました。
また「腑に落ちる」や「腹が立つ」「腹の虫が治らない」などお腹な内臓と感情に関する諺がたくさんありますが、これは私たちの感情には腸内細菌の状態などを含む腸内環境が深く関わっていることが昔の人には直感的にわかっていたことが窺えます。ですから自分の直感を研ぎ澄ますには自身の腸内細菌を整えておくことが大切で、産土神社をはじめとする神社にお参りするということは、自身の幼少期経験した原体験を追体験することになり、自分の源とも言える部分に触れる体験とも言えます。
これはまだエビデンスレベルの低い話にはなりますが、個人的には土壌細菌は私たちの腸内細菌と直接触れ合わなくとも何らかの方法で情報のやり取りをしているのではないかと考えています。
あくまでも私の個人的な推察ですが、私の兄がそうであるように若い頃は神社には興味もなかったような人が、ある程度歳を重ねるようになって神社やお墓に足繁くお参りするようになるのは、ここぞという決断をするとき、自分の直感を研ぎ澄ませるために産土神社をはじめとする神社やお墓にお参りすることで、自分の深い部分、それは無意識と呼ばれたり、それこそが神なのかもしれませんが、いずれにせよ自分の意識を超越した何者かに触れることを何処かで期待してお参りしているのではないかと思っています。
そしてその背景には自身の根幹を作り上げてくれた土壌菌と腸内細菌が何らかの方法で情報のやり取りをすることで、より自分にとって必要とする腸内細菌のバランスにチューニングされるのではないかと思っています。
Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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