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土が育む私たちの健康
2023年11月 6日
10月31日に神戸市北区にある「ペチカ農園」にお邪魔しました。
7年前から大阪から移り住まれ、自然農法による農園を運営されている藤原さんに農園開設に至る経緯などもお聞きしながら、秋の味覚を収穫したり、大自然の中で自然の恵みをいただいたりしながら、久しぶりに心が喜び、腸内細菌が喜ぶ機会をいただきました。
藤原さんも大阪で会社勤めをしている時に、いろいろなストレスから命について深く考える時期があったといいます。ちょうどその時に出会った自然農法で作られた野菜たちの味に感動し、農業に関心を持ったそうです。藤原さんは初めて自然農法の野菜を口にした時を振り返り、「その時の野菜は本当に体に染み渡り、命を蘇らせてくれた」とおっしゃいます。
私たちが味を感じるのはつい「舌」だけと思いがちですが、実は消化管全体に味を感じる受容体はあります。つまり本当は消化管全体でその食材を味わっているのですが、私たちはつい消化管という管の下流(小腸や大腸)からの情報を無視しがちです。
また味だけでなく、私たちが抱くさまざまな感情も実は消化管からくる微細な感覚を脳が受け取り作り出されていることも最近の研究でわかってきました。脳腸相関という言葉が最近メディアでも取り上げられることが増えてきましたが、腸内環境の状態が私たち感情に大きな影響を与えているということです。ですので今空前の腸活ブームが起こっていますが、腸内環境を整えることがあなたの精神安定剤になるということもご理解いただけるかと思います。さらに脳だけでなく、腸内環境の情報はさまざまな臓器や組織と連絡をやりとりし、私たちの健康や恒常性の維持に役に立っていることもわかってきています。
その腸内環境の状態を健全に保つための立役者が「腸内細菌」たちです。
私たちの腸内にはさまざまな細菌が共生していますが、腸内環境を健全に維持するためには腸内細菌たちの「多様性」が重要です。つまり多くの種類の細菌たちがバランス良く共生してくれていることが私たちの健康にも大きく影響するということです。逆に多様性が少なくなり腸内細菌のバランスが崩れてしまうと様々な疾患の発症を招いてしまうことも最近の研究が明らかにしています。その腸内細菌はどこからきたのかというと、お母さんの産道を通って赤ちゃんが産まれてくるときに、お母さんがもつ腸内細菌をはじめとする常在菌をもらうことになります。さらに幼少期に多くの細菌たちと接する機会を持つことが、その後の腸内細菌をはじめとする私たちと共生する菌の多様性が増えることがわかっています。ですからお母さんの腸内細菌を整えることの重要性に加え、幼少期に土いじりや泥んこ遊び、スキンシップをたくさん経験しておくことが、常在菌の多様性を高め、将来の疾病リスクを減らすことに寄与するのです。
しかし、もうすでに成人してしまったし、今からでは腸活は遅いとか自分には関係ないとお思いのあなたもそんなことはありません。
できるだけ土に触れる機会を増やし、行きすぎた衛生環境で暮らすことを避け、細菌の多様性の高い健康な土で育った食物を食べ、他者とのスキンシップを増やすなど、大人になってからでも常在細菌の多様性を獲得することは可能とされています。
メンタルコーチ、セミナー講師として各地で講演活動をされているワタナベ薫さんも、農作業を通して土壌菌との触れ合いを推奨されています。このワタナベ薫さんのブログの中で、2019年に私が書いた「土いじりの効能」というブログをシェアしてくださいました。
都会で暮らしていると、土と触れ合う機会が少ない人が多いかと思いますが、どうか工夫して土に触れ合う機会を増やしていただきたいものです。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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