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葉酸と健康
2023年3月11日
私たち人間には推定20,000個の遺伝子があり、そのうちの1つに体が葉酸を細胞で使える形に変換する遺伝子であるMTHFR遺伝子があります。
MTHFR遺伝子は、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ (MTHFR) と呼ばれる特定の酵素を司る遺伝子です。葉酸を含む食品を食べると、MTHFRの働きにより葉酸はメチル葉酸(活性型葉酸)に変換されます。
メチル葉酸はメチル化と呼ばれる化学反応にとってとても重要ですが、このメチル化は、DNAの合成、ホルモンの代謝、解毒など、体内で起こる多くの化学反応を最適化するために必要な重要な反応の一つです。
しかし30〜60%くらいの人はMTHFR遺伝子多型と呼ばれる遺伝子変異を持っています。MTHFRに遺伝子多型があると、メチル化が関わるホルモンや神経伝達物質のレベル、脳機能、消化、コレステロール値などにも影響を与える可能性があります。
MTHFR遺伝子多型の影響は個人差が大きく、症状はさまざまです。これまでの研究により、MTHFR遺伝子多型と次のような健康問題との関連が示唆されています。- ADHD(注意欠陥・多動性障害)
- 自閉症
- 自己免疫疾患・甲状腺疾患
- 循環器疾患(心筋梗塞、脳梗塞)
- 慢性疲労
- 結腸がん
- IBS(過敏性腸症候群)を含む消化器系の問題
- PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)を含むホルモンの問題
- 片頭痛
- 統合失調症
- アルツハイマー病
さらに最近の研究では、MTHFR遺伝子多型はうつ病、不安神経症、その他のメンタルヘルスの問題との関連性も示唆されています。
しかし必ずしもMTHFR遺伝子多型を持っているからといって、上記の症状や健康上の問題が発生するとは限りません。 たとえ、MTHFR遺伝子多型と関連した何らかの症状があったとしても、下記のように食事やライフスタイルを見直し、メチル化が円滑に行えるようサポートすることで、健康を維持することは可能です。
1、葉酸とB12を十分摂取する
食事でより多くの葉酸を消費すると、メチル化が促進される可能性があります。食品では、濃い葉物野菜、アボカド、レンズ豆、海藻類などが含まれます。
MTHFR遺伝子多型を持つ人は、ビタミン B12 が不足しているリスクも高くなります。ビタミン B12 を多く含む食品には、放し飼いの卵、ナッツ、豆、牛肉などがあります。
健康的なメチル化をサポートするその他の食品には、アスパラガス、アボカド、ブロッコリー、豆類などがあります。2、解毒をサポートする
メチル化が低下すると解毒が不十分になるため、体の自然な排泄経路をサポートすることが重要です。
・普段から食物繊維をしっかり摂取する。
・野菜、良質なタンパク質、健康的な脂肪、果物などの抗炎症食品を摂取する。
・精製糖を控える。
・少なくとも週に 4 ~ 5 回は体を動かし、汗をかく。
・腸を動かし、十分に水分を補給して、排尿、排便による解毒を促す。
・解毒をサポートする抗酸化物質などのサプリメントを活用する。
・有害な化学物質などの毒素への暴露を避ける。3、消化管の問題を解決
消化器のサポートは、メチル化を最適化し健康を維持するために重要です。
味噌、漬物、糠漬け、キムチなどの発酵食品を食べることで、腸内細菌叢の最適化を促します。
砂糖、グルテン、精製された穀物、トランス脂肪酸、乳製品などは炎症を助長することがあり習慣的に摂取することは避けましょう。
ボーンブロスも傷ついた粘膜を癒す成分が豊富に含まれており、こまめに摂取することも良いでしょう。4、サプリメントの見直し
MTHFR遺伝子多型があると、非活性型葉酸のサプリメントを摂取すると、これを利用可能な形に変換するのが難しくなり、このことでかえって症状が悪化する可能性があります。
現在のサプリメントに非活性型葉酸が含まれているかどうかを確認し、含まれている場合は摂取の中止を検討してください。
もし可能であれば、生物学的に利用可能な葉酸の形態であるメチル葉酸(活性型葉酸)を含むサプリメントに変更することが良いでしょう。5、アルコール摂取を最小限に
アルコール摂取はDNA のメチル化を阻害し、肝臓の解毒能力を低下させる可能性があります。アルコール摂取を制限することで、MTHFR遺伝子多型による影響を抑えることが可能です。
6、ストレスマネジメント
MTHFR遺伝子多型があると、神経伝達物質レベルのアンバランスがある可能性が高く、特に大きなストレスがかかった時に、気分の変調を来したり色々な刺激に過敏になる可能性があります。
実際、大きいストレスは MTHFR遺伝子多型による症状を悪化させる可能性があります。
ストレスの軽減にはマインドフル瞑想の実践や、自然の中で過ごす時間を長くとったり、ヨガなどがありますが、無理のない範囲で継続することが重要です。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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