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死は存在しない
2022年12月 9日
最近色々な人から耳にして気になっていたので読んだ本がコレ。
著者の田坂広志先生は東京大学で原子力工学に関する研究をされた工学博士で、世界賢人会議ブダペスト・クラブの日本代表を務めるなど、幅広く活躍されている方ですが、こんな先生の新書のタイトルが
「死は存在しない」
だったのには正直、目を疑いました。田坂先生は原子力工学の専門家としての立場から「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」を唱えていらっしゃいますが、これは一言で述べるならば
「この宇宙に普遍的に存在する「量子真空」の中に「ゼロ・ポイント・フィールド」と呼ばれる場があり、この場に、この宇宙の全ての出来事のすべての情報が「波動情報」として「ホログラム原理」で「記録」されている」
という仮説です。
さらに著者は「我々の目の前に広がる世界は、どれほど「強固な物質」に見えても、それを量子物理学のミクロの視点からみるならば、すべて「波動」に他ならない。いやそれは、「目に見える物質」だけではなない。我々が「目に見えない意識」と思っているものも、その本質は、やはりすべてエネルギーであり、波動に他ならない」と述べていらっしゃいます。臨床の現場ではまだまだ「波動」と言うとたちまち「怪しい!!」「似非科学」と言われがちなのですが、どうやら最先端の量子科学の世界ではゼロ・ポイント・フィールド仮説は決して荒唐無稽なものでもないようです。
この仮説では、宇宙では次のようなことが起こっていると説明しています。- 「量子真空」から生まれた、この宇宙の神羅万象の真の姿は、「物質」ではなく、「波動」である。
- 従って、この宇宙に生じたすべての出来事は、我々の肉体や意識の活動も含め、すべて「波動」に他ならない。
- そして、この現実世界で生じた「波動」の軌跡は、量子真空内のゼロ・ポイント・フィールドに、やはり「波動」の軌跡として、すべて「記録」されている。
つまりこれは、『「現実世界」と全く同じ世界が存在している』ということを意味しています。
言葉を変えるならば、『「現実世界」と同じ、「深層世界」が存在している』と言うことです。
とするならば、「現実世界」を生きている「現実自己」に対して、「深層世界」を生きている「深層自己」と呼ぶべきものが存在してると言うことにもなります。
また著者は死後の意識についてこのように語っています。『肉体の死後、我々の意識は、その中心をゼロ・ポイント・フィールド内の「深層自己」に移し、生き続けていく。その意味からは、死は存在しない。フィールド内では次第に「自我」の意識が消えていき、それとともに、すべての「苦しみ」も消失し、次第に「至福に満たされた世界」に向かっていく。このプロセスを、仏教では「成仏」と呼んできたのであり、その「至福の世界」を「涅槃」と呼んできたのである。』
なるほど、著書のタイトルの意味がやっと理解できました。
ユングはかつて集合的無意識の概念を提唱しましたが、これはおそらくここで言うところの深層自己の無意識とほぼ同じことなのでしょう。私たちが肉体の死を迎えたとき、エゴが消え、この深層自己の無意識へと戻っていくと言いますが、ケン・ウィルバーは、これは超自我意識であり、そこには苦しみや葛藤はなく「至福に満ちた」「愛一元の」世界が現れると述べています。さらにテーマは壮大となりますが、地球の歴史46億年の間に生存し、死滅して行った「全ての生命の意識」にも超自我意識は触れるため、「宇宙意識」と呼ぶべきものに拡大していくと言い、まさにこれは華厳経の思想である「事事無碍法界(じじむげほっかい)」(宇宙のあらゆる生命、全ての事象が溶け合い、関係しあい、一つになって生きることの幸せを解いている教え)に通じるものです。
これまでにもゼロ・ポイント・フィールドに関して書かれた著書がいくつかありましたが、それらよりも詳しく科学的な視点からゼロ・ポイント・フィールドについて解説されており、非常に多層的な広がりのある概念であることが理解しやすい内容でした。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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