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表土の仕組み
2020年12月30日
今年の初め日本でもコロナが流行し始めた頃に、ある知り合いのナースがSNSでシェアしていた記事を読んで「なるほど」と感心したことを思い出し、また読み直してみた。
生物の多様性の重要性を唱える有識者は増えているが、実際の社会の進んでいる方向性やアスファルトに覆われた都市の作られ方を見ていると、決して生物の多様性を重視した方向性に動いてはいないように見える。新型コロナウイルスの流行はこの流れに一石を投じるものと思われる。本来、生物の多様性の中においては脅威になどなり得ないウイルスが、あまりにも生物多様性の低下した都市生活の中でその存在が際立ってしまった。以下引用
ー『表土が発達した複雑な環境では、一つの病気は簡単には拡散しない。表土の持つ物理化学的な性質によって、先ず大部分の病原体は吸着される。都会では風が吹くたびに舞い上がりなかなか落ち着かない粉塵も、森林では湿った多孔質の土壌に捕まり清浄な空気が保たれる。そこには数多の微生物がひしめいており、それらが産出する生理活性の高い化学物質に曝露され、病原体は瞬く間に多重の競争・共生関係の網に取り込まれる。植物の多様性がある程度以上高ければ、微生物の多様性は桁違いに増え、それらの天文学的な数の遺伝子が全体として足並みを揃えて働くことがわかっている。しかも全体をまとめるオーケストラの指揮者のような役割として、実は植物や微生物と共生している様々なウイルスが重要になることも最近わかってきている。』
『(中略)このような根本対策が実装可能な生活形態としては、地産地消かつ環境回復型の食料生産や複数の自然エネルギー源に支えられ、情報通信技術で繋がった地方分散型の居住形態があるだろう。
健全な表土と、それを相乗的に支える動植物の循環。それらを最低限の労力で高水準に保つための感染症や寄生生物の存在。それらのサイクルとバランスを人間の産業活動の根幹に取り戻す以外に、根本的な解決策は存在しない。』
ー引用ここまで。(引用元:https://synecoculture.org/blog/?p=2640)著者の舩橋真俊氏は、有機農法でもなく自然療法でもない「協生農法」を実践する科学者。
協生農法とは、土地を耕さずに無肥料・無農薬で、100種類以上の野菜や果樹を混生・密生させて栽培する農法のこと。協生農法では、植物のポテンシャルを最大限に引き出しながら、生態系自体を作り上げるとされ、この農法が都市空間でも成り立つことを実証すべく現在六本木ヒルズのビルの屋上で実験を行っている。マーティン・ブレイザー博士も著書に書いているが、ピロリ菌にしても消化管内に生息する微生物の多様性の低下により、ピロリ菌の存在が目立つようになり、それまで他の微生物との相互作用で宿主を害するような働きをしなかったピロリ菌が、その相互作用をする相手を失ったことで思わぬ害を及ぼすようになってしまったのではないか。
土壌環境にしても腸内環境にしても、そこに生息する生物の多様性は私たちの生命と直結し、それらとの相互作用で得られる直感や洞察があるからこそ、人はその深い叡智を宿すことが出来たとも言える。生物の多様性を維持できる循環型の社会システムが、これからのヘルスケアには欠かせない概念になるだろう。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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