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Enlightenment(悟り)
2020年8月18日
"You cannot understand yourself simply by thinking about yourself. You can understand better by understanding others. You will never understand the East if you are confined to the East. You can understand yourself much less if you are obsessed by your "past", which is regionally or culturally limited."
「単に自分のことを考えるだけでは自分のことを理解することはできない。他者を理解することで初めて自分を理解することができるのだ。東洋の中に閉じこもっていては、東洋のことを理解などできないのである。自分の「過去」という様なものは、地域的に見ても文化的に見ても限定されたものでしかなく、その自分の過去に囚われていては、さらに僅かなことしか理解できないものである。」 ー鈴木大拙 「大乗仏教の世界的使命」1943
以前から一度は行ってみたいと思っていた金沢の「鈴木大拙館」に、この度初めて訪れることができた。
鈴木大拙という人間に対する魅力もさる事ながら、その随所に彼の哲学を具現化したデザインが見られる建物にも魅せられた。
展示物はさほど多くはないが、それがむしろ新鮮であり、さらに訪れる人が思索にふけるためのスペースがあちらこちらにあり、その禅的なデザインやディスプレイにも彼の哲学が生きていると感じさせる空間だった。
そういえば確か、"Enlightenment"(悟り)という英単語に初めて出会ったのは、既に医者になってからのことで、当時西洋医学を深めれば深めるほどその限界を思い知らされることも多く、日々悶々としていた研修医の頃のことだったと思う。我々は肉体を持った存在である以上、肉体からの科学的なアプローチももちろん必要ではあるものの、実際の診療の現場ではそれに何かをプラスすることの必要性を感じていた。しかし具体的に何をどうすればいいかもよく分からなった。
生身の人間を診ている以上、単なる論理では決して理解できないものがあるとずっと感じていたし、人が本当の意味で治っていくには我々の知性を超えた何かがなければいけないと思っていたが、西洋医学の成書にはその答えを見つけることはできなかった。
そして暇を見つけては心理学や精神世界の本を手に取る機会が増えていった。
そんな時に出会ったのが鈴木大拙の本だった。
その本には1枚のCDが付録としてついており、彼が米国在住の時、米国や欧州の各地で講演活動を行なっていたときの講演を録音されていた。
その彼の講演の中で繰り返し彼が使っていた言葉の一つが、"Enlightenment"だった。「悟り」と言う日本語はもちろん知っていたが、その本当の意味などまだ体験もしたことのない、ある意味自分とは無縁の言葉であると思っていたが、彼の講演の中で出会った
"Enlightenment"
と言う言葉を通して、なんとなくその意味を理解した様な気がして、自分が医師としてこれからもやっていく上で、おそらく大きな意味を持つ言葉であろうと直感的に感じたことを思い出し、とても懐かしく思った。
今回はスケジュールの関係で長くは滞在できなかったが、またいつか是非ゆっくり訪れて見たい場所が増えた。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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