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過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome ; IBS)とは?

2020年6月27日

電車などでの移動中や、大事な会議の途中で急にお腹が痛くなってトイレに駆け込んだりすることがよくありませんか?
あるいは普段からお腹の張りを感じていたり、下痢や便秘を繰り返していませんか?

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このような慢性的に腹痛・不快感・腹部膨満感・便秘や下痢など便通の異常を来たすもので、潰瘍や炎症などの器質的疾患がなく大腸を中心とする腸の機能の異常が原因と考えられるものを、過敏性腸症候群(IBS)と呼びます。
2016年に発表されたRomeⅣ診断基準によると...

〈IBSのRomeⅣ診断基準〉

最近3ヶ月間、月に4日以上腹痛が繰り返し起こり、次の項目の2つ以上があること

  1. 排便と症状が関連する
  2. 排便頻度の変化を伴う
  3. 便性状の変化を伴う

期間としては6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月間は上記基準をみたすこと

また便形状によりIBSの型分類がなされます

〈IBSの分類(RomeⅣ)〉
1.便秘型IBS(IBS-C) 硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便が25%未満のもの
2.下痢型IBS(IBS-D) 軟便(泥状便)または水様便が25%以上あり、硬便または兎糞状便が25%未満のもの
3.混合型IBS(IBS-M) 硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便も25%以上のもの
4.分類不能型IBS 便性状異常の基準がIBS-C,D,Mのいずれも満たさないもの

IBSの原因

IBSでは、腸の蠕動が通常よりも時には強かったり時には弱かったりと安定しないこと、腸の内圧が高くなっていること、そして内圧が高いときに痛みを感じやすくなっていること(腸管知覚異常)などが指摘されていますが、その原因はこれまで原因不明とされてきました。
しかし最近になってある説が有力視されるようになっています。
これまでにも食中毒を起こした後に発症する感染後過敏性腸症候群(IBS-PI)が知られていましたが、実はIBSの中でも特に下痢型IBSと混合型IBSの多くが、「食中毒」をきっかけとした「自己免疫反応」によるものであるという説が有力視されるようになってきました。
現在考えられている発症機序は次の通りです。

  1. サルモネラ、キャンピロバクター、赤痢菌、病原性大腸菌などによる食中毒を起こすと、これらの菌が「CdtB」と呼ばれる毒素(エンドトキシン)を放出する。
  2. 身体はこの「CdtB」と戦うために抗CdtB抗体を産生して、エンドトキシンを中和する。
  3. この時、分子レベルでの相同性から自己抗体である抗vinculin抗体も産生される。(自己免疫反応)
  4. Vinculinは腸管の蠕動を司る神経細胞を構成するタンパク質であり、抗vinculin抗体はこのvinculinの働きを阻害する。
    腸の蠕動が阻害され、腸管内の細菌や老廃物を排除する機能が低下する。
  5. IBSやSIBO(小腸内細菌異常増殖症)の症状が出現する。

また発症時には何らかのストレスが関与していることも多く、不安症状や抑うつ症状などの精神症状も伴うこともあることなどより、心理的要因もIBSの発症や増悪に関与していると考えられています。
特に幼少時に心的なトラウマなど大きなストレスがかかったときに、腸脳相関を司る神経系に過敏なプログラムがインストールされ、成人してからもその影響を受けてしまうようなことも指摘されています。

IBSの診断

IBSの診断は基本的には除外診断であり、下記疾患でないことを証明しておくことが重要です。
下痢型では、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患のほか、感染性腸炎、乳糖不耐症、セリアック病、甲状腺機能亢進症 など
便秘型では、大腸がん、甲状腺機能低下症や単純性便秘 など

IBSの一般的な治療

生活習慣の見直し 過労・ストレスを避けることや十分な睡眠・規則正しい食習慣が必要です。
緊張状態は胃酸や消化酵素の分泌を減らし、胃腸の蠕動を低下させます。
また食事内容としては便秘型の人には、根菜類を中心とした食物線維が有効です。
(SIBOの様に腹部膨満が目立つ場合は低FODMAP食(後述)が推奨される場合があります)
薬物療法 生活習慣の改善にも関わらず症状が強い場合には薬物治療を行います。
  • 抗コリン薬(ブスコパン)
  • 消化管運動調整薬(セレキノン)
  • 緩下薬(酸化マグネシウム、プルゼニド、アローゼン、リンゼスなど)
  • 整腸薬(ビオスリー、ビオフェルミン、ラックビー)
  • 消化管運動調整薬(セレキノン)
  • 高分子重合体のポリカルボフィル(コロネル)
  • セロトニンHT3受容体調節薬(イリボー)

などが選択され、そのいくつかが併用されます。

<ストレスの関与や精神的要因が疑われる場合>

  • 抗不安薬(ソラナックス)
  • 抗うつ薬(ドグマチール・トリプタノール)など

その他、東洋医学的な「証」に合った漢方薬が処方される場合もあります。
桂枝湯、大建中湯、桂枝加芍薬、小健中湯、黄耆健中湯など

食事療法

これまで腸内環境に良い食材として、一般的に食物繊維や発酵食品が注目されてきました。しかしIBSやSIBOといった病態では、むしろこれらの食事が症状を増悪させるケースが多いことがわかってきました。そこで注目されているのが「低FODMAP食」です。

FODMAPとは
F : 発酵性
O : オリゴ糖  ガラクトオリゴ糖とフルクタン
D : 二糖類  ラクトース(乳糖)が代表
M : 単糖類  フルクトース(果糖)が代表
and
P : ポリオール類  ソルビトールやキシリトール
の頭文字をとったもので、つまり発酵しやすい4種類の糖類のことで、これらの食事をできるだけ減らした食事が「低FODMAP食」です。

低FODMAP食は症状の改善に役立ち、IBSやSIBOの方は一度は試してみる価値のある食事療法です。ただし、長期的には低FODMAP食のように食物繊維を含む炭水化物が少ない食事はかえって腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)を起こす原因にもなるため、症状が改善したら徐々に緩めていくことが必要です。

心理療法 「心身症」というとあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、例えば、アレルギーや自己免疫疾患、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、癌でさえも場合によっては、ご自身が気がついているストレスや気がついていないストレスも含めて、心や体にとってのストレスやその対処法ー(長年に及ぶとその人自身の生き方になっている場合もあります)ーがその発症と経過に大きな影響を及ぼしている疾患のことを「心身症」と呼びます。IBSは代表的な心身症の一つです。
「腸脳相関」という言葉のように腸と脳(心や行動)はお互いに影響し合っています。その腸内細菌の乱れさえも食べ物や生活習慣はもちろん、心理的なストレスが引き金になっていることが多くあり、心理療法が有効であることがあります。


Photo by Alexander Krivitskiy on Unsplash

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