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メタンSIBOの治療
2020年4月 4日
1.食事編
SIBOの治療、とりわけメタンSIBOの治療において食事療法は重要です。メタンガス産生を行う細菌やアーキアの餌となる食事を制限することはが症状改善につながります。SIBOの治療には低FODMAP食が取り入れられることが多いのですが、メタンSIBOの場合、低FODMAP食が合わない方もいます。より個別性の高い食事療法を実現するためには、下記のことを考慮する必要があります。
「発酵しやすい食物繊維」
アーキアは水素を餌とするのに対して、水素を産生する細菌は何を餌としているのでしょうか?
答えは「発酵しやすい炭水化物」です。
低FODMAP食のように食物繊維を制限することでSIBOの症状が改善することは日常診療においてよく観察されることです。しかし便秘と関連のあるメタンSIBOの治療においては、食物繊維を減らすことがむしろ便秘を悪化させることがあります。多くのSIBOで困っている人たちはこのことを見落としています。食事に含まれる食物繊維が少なければ、酪酸のような短鎖脂肪酸(SFCA)も少なくなりますが、もともと酪酸はメタンレベルと反比例し、大腸の蠕動を促進させることが知られており、メタンSIBOのようにメタンが多い場合、酪酸は通常より減り、大腸の蠕動が阻害され、ガスが溜まりやすい状態となります。
この理由により低FODMAP食も適切に取り入れなければむしろ症状が悪化します。つまりメタンSIBOにおいては食物繊維を減らすことは必ずしもよくないのです。
SIBO呼気検査を受けない場合で、低FODMAP食を実践しても症状が改善しない場合は、メタンSIBOの可能性を考え、腹部症状を見ながら穀類やナッツ類などの食物繊維をある程度摂取することも必要でしょう。ですから、蠕動を促しメタンの産生を減らす細菌に餌を与えるためにも、食物繊維やポリフェノールを少量から試しながら増やして行くことをお勧めします。摂取可能な場合、推奨される食材は下記のようなものです。
フラックスシード、ベリー、ナッツや種、玄米、キノア、緑茶 など「タンパク質」
もう一つ考慮しておくことは、たんぱく質の「量」と「質」です。
炭水化物を減らす時に、多くの人は炭水化物の代わりに多くの脂肪と動物性たんぱくを摂取しようとしますが。しかし、これが最近の研究で問題となり得ることがわかってきました。この研究では過剰な脂肪はリポポリサッカライド(LPS)の吸収を促進します。LPSは細菌の出す毒素の一種で炎症を促進します。ですからこれらが吸収されると様々な炎症性疾患の原因となります。つまり赤身の肉を減らし植物性のタンパク質を許容範囲で摂取することが症状改善に役立つのです。
「大豆イソフラボン」
大豆製品に含まれるイソフラボンはメタンや硫化水素を減らすことが知られています。
これは、メタン産生菌や硫化水素産生菌の餌である水素がエクオール産生菌により消費されますが、これは「ダイゼイン」として知られる大豆イソフラボンがエクオールに変換されています。つまり低FODMAPやたまり醤油やテンペ、味噌などの発酵した大豆製品は、もし許容範囲であればメタンSIBOの治療として加えてもいいでしょう。(参考)The functional gut health clinic by Bella Lindemann
Photo by Joanna Kosinska on Unsplash
Photo by Jossue Velasquez on Unsplash Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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