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SIBOを通して得られて気づき
2019年12月24日
最近、SIBO(小腸内細菌異常増殖症)のご相談を受けることが多くありますが、その中でも特に印象に残った方がいらしたので、少し長くなりますが今回はその方の経過をご紹介します。
(ご本人の了解を得ています)
30代女性会社員の方で、腹部膨満と左下腹部痛を主訴に、当院受診されました。
幼少時から緊張すると下痢をしやすかったようですが、最近は下痢は少なくなったものの、腹部の膨満や、左下腹の痛みを自覚するようになりました。
これまでに様々な病院、クリニックを受診し、内視鏡検査等の精査してきましたが、はっきりした原因がわから
「過敏性腸症候群」
として様々な投薬治療を受けていました。
しかし、一向に症状は改善せず、ネットでいろいろ調べて自分の症状と垂らし合わせて、「SIBO」ではないかと思うようになり、当院の予約をお取りになられました。
初診時の自律神経検査では、交感神経が優位な状態で、自律神経のアンバランスさが示唆されました。
また、血液検査では従来の基準値では「異常なし」でしたが、分子栄養学的に詳しく解析したところ
タンパク質不足、
ミネラル不足、
ビタミン(特にB群)不足
があることが判明し、
消化吸収機能の低下が示唆されました。
その他の検査では
・SIBO呼気検査(施行せず症状で判断)
・尿中有機酸検査→カンジダ増殖あり
・IgG食物過敏症検査→中等度リーキーガット あり
との結果でした。
SIBOに関しては、症状からSIBOが疑われるときは、必ずしもSIBO呼気検査は行わず、食事療法の反応を見て判断することもあります。
そして多くのSIBOやIBSと診断されている方を、診ていると感じることですが、確かに腸内環境の乱れや自律神経の乱れはありますが、その背景にあるストレスの影響が少なからず存在します。
この方は自律神経の乱れが目立ち、心理士によるカウンセリングも受けていただいたところ、思いの外不安が強く、どうやら数ヶ月前にがんで亡くなった、祖母のことが頭から離れず、「自分も何か悪い病気」ではないかという不安がずっとつきまとっていた、ということがわかりました。
また、仕事でも責任があるポジションにつき、残業も以前より多くなっているとのことでした。
これまでは比較的自由に仕事ができる環境でしたが、今のポジションになってからは、周囲の顔色を伺いながら仕事を進めることに、少しストレスを感じていらっしゃいました。
当院で提案したこととして、
・食事療法(Low FODMAP dietやボーンブロス)
・胃酸対策(胃酸を増やすための食事指導)
・消化器をサポートするサプリメント
・ビタミン・ミネラルサプリメント
・喜びリストの作成(どんな時にエネルギーが上がっているか?)
などでした。
つまり、この方はSIBOやリーキーガットに対する、食事療法やサプリメントなど、physicalなアプローチも行いましたが、それと同時にmentalへのアプローチも行いました。
これまで様々なphysicalなアプローチをやってきても、効果のなかった方にはmentalへのアプローチは重要と考えています。
特にこの方は強い不安感が病態に影響していることも考えられたため、mentalへのアプローチの方がより重要であったと思われます。
そして1ヶ月後の再診の日。
この方は以前より明るい表情で、診察室に入って来られました。「症状は以前に比べずいぶん良くなりました。
辛さでいうと1〜2割くらいにまで軽減しました。」
「これまで食事を作るのはそんなに、好きではなかったのですが、ボーンブロスを始めて良くなっている実感があり、キッチンに立つのが少し楽しくなりました」
「実は先日カウンセラーさんとの面談の中で
《好きだったおばあちゃんがもしここにいたら、なんておっしゃいますか?》
と聞かれた時にしばらく考えて
〈心配しなくて大丈夫といってくれると思う〉
と答えました。
するとなんだか気がすごく楽になって。。。
仕事ももっと好きなようにやってもいいかなと、思えるようになりました。
亡くなった祖母のことは自分の中では、そんなに気になっていないと思っていましたが、実は結構ショックだったんだなと。
でも、今はそばにいてくれそうな気がします。」SIBOはその名の通り、本来増殖するべきでない細菌が、小腸内で異常増殖していることが病態とされ、食事療法や、抗生剤などが使用されることが推奨されています。
そして一部の医療関係者はこの細菌の増殖こそが、病態の本質であり、これにストレスなどの精神的要因は、関係ないと断言しています。
それどころか、すぐにストレスに原因を求めるのは、良くないと仰る方もいらっしゃいます。
しかし私の経験上、今回ご紹介した方のように、精神的な気づきが大きな変化を起こすきっかけとなる方は少なくありません。
確かに、ストレスのみが原因として向精神薬などを、漫然と出し続けるのは本末転倒ですが、適切なカウンセリング等により、ご自身の内的な葛藤に気づいたり、それに対処できるようサポートしていく過程において、科学では説明できないような共時性を体験したり、ご自身が病気を経験したことの意味を理解したり、エビデンスにこだわり症状にのみフォーカスしている時には、決して気づくことがなかったであろう自分に出会えることがあります。
この過程は病気を単なる病気ではなく
「創造的な病(Creative Illness)」
へと昇華しうるプロセスであり、慢性的な不調を抱える方への治療には、欠かせないものと私は考えています。
たとえ他に栄養不足や毒素の蓄積など、根本原因と考えられるものがあり、これらに対処する上でも並行してご自身の内的な葛藤に気づき、向き合うことで、その後の治療効果を高めるケースが多くあります。
多くの皆さんは身体的な症状で悩まされ、受診されるので、「心の問題」とされると、見えないものだけにとっつきにくく、すぐには受け入れ難いことが多いのですが、特に様々な標準治療を受けてきたにも関わらず、症状の改善がないようなケースには「見える部分」と「見えない部分」を両輪と考え、患者さんとの信頼関係が築かれた上で、「見えない部分」への働きかけも行なっていきます。
そうすることで、それまでの治療に無反応であった頑固な症状が、嘘のように和らぐことも少なくないのです。
気になる症状のある方は一度ご相談ください。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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