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土壌菌の力
2019年12月17日
先週末は知人から誘われて自然農法を実践している農場見学に行ってきました。
今回は中学生の息子も一緒に見学に参加し、菊芋掘りをさせていただきましたが、普段なかなか土を触る機会のない私たちにとって、自然と触れ合う大変貴重な機会となりました。
くり坊農園の久理田昌治さんは、もともと淡路島で農場を経営されていましたが、阪神淡路大震災以後、友人の農場を受け継ぎ、兵庫県小野市で自然農法による農業を実践していらっしゃいます。
先代の頃から始められたこの自然農法は、当初は周辺の農家からも疎まれ、肩身の狭い思いをされた時期もありましたが、ご自身の経験と勘で自然の力を信頼し、信念を持って自然農法を続けてきた結果、今では多くの賛同する人々に応援されるようになったそうです。
ここの畑では農薬も堆肥も一切使わず、
植物が生育するための土作りを
土壌菌の力を利用して行なっています。
「土作り」と言っても
結局のところ、
いい土をつくってくれるのは
土の中の細菌、つまり土壌菌なのです。
そして植物の成長を決して邪魔せず、かと言って無理やり大きく発育させることもなく、自然の摂理に忠実に従い自然の恵みに与る。
自然に本来備わった力を信頼し、土壌菌が活動しやすい条件を提供できるようになったのも、決して容易な道だったわけではありません。
久理田さんご自身が自然の中に長年身を置いていたからこそ
「何も与えなくても、
食物が育つ条件の全てが
大地にはある」
ということに気づかれました。
何もしなくても森が元気なように、微生物たちの力を借りて、この農場の土壌菌は多様性を維持しています。
人間が良かれと思って与える肥料でさえ、場合によっては自然の絶妙なバランスを崩す原因となります。
これは私たちの腸内細菌とも、共通している部分が非常に多く、良かれと思って行なってきた医療行為により、その絶妙なバランスが崩れ、腸内細菌の多様性が失われるということがわかってきました。
人間は都会の生活を始めることで、多様性の高い土壌菌を含む土から離れた、生活を送ることとなり、結果として、共生する腸内細菌や皮膚の常在菌の多様性を失い、様々な疾患リスクを抱えることになったとも言えます。
先日土壌菌の中に、抗鬱効果や免疫調整作用を有するものがいる論文をご紹介しましたが、今回私たちが農業体験をしている間の息子の充実した表情や、私自身の気分の良さ、体調の良さを考えると土を触ることの効能は、本当に計り知れないものがあると感じました。
かつて私自身が腸内細菌の多様性を失い、いわゆる難病を患ったわけですが、今回改めて、土壌菌の力に思いを馳せる機会を与えられ、この農場で実った栄養価の高い食物をいただき、健康で日々過ごせることに心から感謝し、文字通り「腸内細菌が喜ぶ」週末となりました。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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