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米国におけるFMT死亡事例発生と当研究会の対応について
2019年7月30日
米国にて、FMTにおける死亡事例が発生したとFDAより発表がありました。(2019年6月13日)
Important Safety Alert Regarding Use of Fecal Microbiota for Transplantation and Risk of Serious Adverse Reactions Due to Transmission of Multi-Drug Resistant Organisms
[死亡事例要約]
・免疫不全状態の患者2名が、FMT(腸内フローラ移植)を受けた後に感染症を引き起こし、うち1名が死亡した。
・移植に使用されたドナーの便からは、耐性菌の一種である基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)を産生する大腸菌(E.coli)が検出された。
多くの方がご存知の通り、大腸菌(E.coli)は腸内に常在する細菌であり、全く危険な菌ではありません。
また、耐性を獲得したESBL産生株については、欧米での保菌率は3%程度にとどまるものの、日本人の健常者においては15%以上にのぼるなど、それだけで健康を損なうものではありません。
(参考)
「わが国の健常人における ESBL 産生菌の分離状況と特徴」
健常者における基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌の便中保菌とリスク因子
しかし、本人が免疫不全状態に陥ったり、抗生物質の多量使用などにより正常な細菌叢が崩れると、
耐性菌が害を及ぼすようになります。
今回の死亡事例の問題は、下記に集約することができると考えられます。
・患者さんが免疫不全状態であるにも関わらず、ドナーの耐性菌検査を行っていなかったこと
・ESBL産生菌が欧米ではマイナーな菌であり、健常保菌者が少ないこと
当研究会では現在、ドナーバンクの運営体制をはじめとして、研究会の安全管理体制の公開準備をすすめております。
今回の事例を受け、さらに情報公開が急務と考え、近日中にウェブサイトにアップ予定です。
また、6/20(木)に倫理委員会を招集し、下記の項目の安全管理について承認を得ております。
1,ドナーの選定・検査項目・検査頻度
2,ドナーからドナーバンクへ便が提供されるまで
3,菌液にするまでの衛生環境
4,医療機関への輸送
5,移植現場での管理(菌液の扱いや患者様の状態把握など)
上記の情報公開を予定しているとともに、倫理委員会や臨時理事会などで、移植対象患者様の限定や、ドナー検査項目の追加を検討中でございます。
ただし、いくら検査を厳密に行ってもリスクは伴います。
当研究会では、移植担当医療機関から移植評価に併せて有害事象の有無の報告を義務付けております。
これまで報告を受けている内容は、軽度の腹痛や下痢、手足のほてり、気分不快などです。
有害事象につきましても、症例報告とともに今後皆様への情報公開を行ってまいります。
移植をご検討中の皆様におかれましては、研究中の項目であることに伴うリスクについても主治医と十分にお話し合いいただき、
自宅での腸内フローラ移植や、検査を受けていないドナー便を使用した民間クリニックでの移植はお控えいただくことをおすすめいたします。
最後に、この度の事故で亡くなられた患者様には謹んで追悼の意を表し、心からご冥福をお祈りいたします。
一般財団法人腸内フローラ移植臨床研究会 研究専門クリニック
FMTクリニック 井上正康
https://fmt-japan.org/3260 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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