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幼少時のストレスが脳と腸内フローラに与える影響
2018年11月15日
古くから「病は気から」と言われるように、心と体は密接に関連していることは知られています。
この度エメラン・メイヤー博士の著書「腸と脳」を読んで、この「病は気から」が科学的に解明されて来たことが改めてよくわかりました。
従来、医療の現場でも心理社会的なストレスが身体疾患の発症や経過に影響を与えているものを「心身症」として扱います。
代表的な心身症の一つに「過敏性腸症候群」があり、腹痛や下痢、便秘などの便通異常を繰り返すのが特徴で、脳腸相関という言葉も最近では随分目にする機会が増えて来ました。
過敏性腸症候群では、心身のストレスに対して腸管運動や内蔵知覚がが過剰に反応することが知られていますが、この反応には幼少時に受けたストレスにより、誤った脳のプログラムが形成されたものだと考えられるようになっています。
親による虐待を含め、幼少時のストレス体験は子供の脳に永続的な影響を及ぼすことが最近の研究でわかって来ましたが、これは必ずしも生まれてから受けたストレスだけでなく、母親の子宮内にいるときに、母親が受けたストレスも影響するようです。
また、この誤った脳におけるプログラミング(ストレスに対して通常よりも過剰反応してしまう)は世代間で受け継がれるケースも確認されています。つまり後天的な要因で起こった獲得形質が遺伝するということで、これは親子の間で虐待などの負の連鎖を生んでしまうメカニズムの一つと考えられます。では一度脳が誤ってプログラミングをされた場合はそれを再度プログラミングし直すことは不可能で、腸の過敏症状などの不快な症状とは一生付き合っていかなければいけないのでしょうか?
答えは「No」です。(ダジャレではありません・・・)
私たち人間が他の動物と大きく異なる特徴の一つとして、脳の「前頭前野」が発達していることが挙げられます。この前頭前野は理性を司り私たちが人間らしくあるための判断を行なっている領域です。適切なセラピーを受けることで、この前頭前野に働きかけ、一度形成されてしまった誤ったプログラムを逆転させる方法がここ2〜30年で開発されて来ました。
具体的には「認知行動療法」「催眠療法」「EMDR」「ホログラフィートーク」「マインドフル瞑想」などがこれに当てはまり、脳へアプローチする過敏性腸症候群の治療となります。(いずれも当院で提供が可能なセラピーです。詳しくはまた改めて紹介しますね)また、最近の飛躍的に進歩した腸内細菌の研究では、過敏性腸症候群では腸内細菌の乱れ(dysbiosis)が存在することがわかって来ました。さらに幼少時に受けたストレスがdysbiosisにも関与し、大人になってもその変化が持続することもわかっています。
ストレスを受けた母親の腸内フローラの多様性は低下(dysbiosis)することが知られていますが、そのようなストレスを受けた母親から生まれた子供の腸内フローラにも多様性の低下という特徴が受け継がれます。
またマウスの実験では、母親の腸内フローラの乱れは、胎児の腸内フローラに悪影響を与えるだけでなく、脳にも影響を及ぼします。
ですから過敏性腸症候群の原因として、ストレスに対する過剰な神経系(脳)の反応に加え、腸内細菌の乱れも関与しているということで、脳へのアプローチだけでなく、腸へのアプローチも合わせ両側面lから治療することが重要です。
腸へのアプローチとしてはプロバイオティクスやプレバイオティクスに加え、腸内フローラ移植も選択肢の一つとして普通にとりあげられるのはそんな遠い将来の話ではありません。現に私たちの研究会で経験した過敏性腸症候群の症例で、腸内フローラ移植により症状が改善した例は69%と有効性が示唆されています。
こうやって考えてくると、過敏性腸症候群は決して腸だけの疾患ではなく、不安障害やうつ、自閉症などと同じように神経発達障害の一つと捉えてもいいかもしれません。
気になる症状があればお問い合わせください。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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