- ルークス芦屋クリニック
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当院での経験例 症例①
2017年5月 9日
当院は開院して5ヶ月になりますが、来院してくださった方の中から大変印象に残った経験例をご本人の承諾を得てご紹介したいと思います。
症例① 40歳女性:壊疽性膿皮症、腸管神経節細胞僅少症 - 9歳 総胆管肥大手術
- 19歳 腸閉塞、MRSA感染
- 24歳 皮膚の形成手術、術後術創が開き、 一時的に人工肛門造設術(のちに閉鎖)
- 30歳 壊疽性膿皮症発症
- 36歳 腸ヘルニア手術
- 39歳 腸ヘルニア手術、人工肛門造設術
腸管神経節細胞僅少症と診断され 以後経鼻栄養となる
2016/12月初診時
母親と訪問看護師の付き添いのもと来院されました。
ステロイド使用にて下肢筋力低下あり、自立歩行できるも不安定で見守りが必要な状態です。
表情に活気なく声も小さく、周囲の批判などネガティブな発言が目立ちます。
胸部に3箇所、左上腕に1箇所の壊疽性膿皮症あり深い潰瘍を伴っていました。
また慢性的な下痢が続いており鼻から経管栄養を摂っていました。
体重 57kg
初対面の印象として、長年難病を患われ、それとの付き合いに疲れ切った様子で、なかなか希望を育む活力もない様子でした。
この方の自己治癒力を阻害する原因を「目に見える化」するためにいくつかのバイオロジカル検査を行います。
まず腸の難病ということもあり、腸内環境の乱れている程度を知るためにIgG食物過敏症検査を施行しました。(Fig.1)上図では、ほとんど全ての食材に対する反応が陽性を示し、腸粘膜上皮のバリアー機能の破綻が示唆されました。
いわゆるリーキーガット症候群(腸管壁浸漏症候群)の状態であると考えられます。
また、同時に測定したIgGカンジダ抗体は強陽性でカンジダ(カビの一種)の異常増殖を伴う腸内環境の著明な乱れが示唆されました。
さらに尿中有機酸検査では、カンジダの産生する生物毒であるアラビノースや悪玉細菌であるクロストリジウム・ディフィシルが産生する代謝産物が検出され、腸内細菌叢の乱れが裏付けられる形となりました。(Fig.2)さらに酸化ストレス(体のサビつき度) 高値AGE(終末糖化産物 細胞の焦げつき度)高値(細胞老化:57歳相当)、有害重金属 カドミウム、水銀の蓄積、亜鉛、マグネシウムの欠乏などが存在することも判明しました。
初診時より腸内環境改善目的のサプリメントの開始と、また、それと同時に、皮膚の潰瘍修復や腸粘膜の損傷修復に欠かせないビタミンやミネラルを十分に補充できるようにサプリメントを開始しました。
さらに、ご本人に宿題をお願いしました。その宿題は「喜びリスト」と呼ばれるもので自分がワクワクしたり、充足感を得られるものをなんでもいいからノートに書き留めていくようにお願いしました。
私たちは、病気を患っているとついつい「悪いもの探し」をしてしまう傾向がありますが、意識的に「喜び」に目を向けていただくエクセサイズです。
そして同時にただ「治りたい」から「治ったら〜したい」と言うように治った後のことも五感を使いイメージしていただく練習をご自宅でしていただきました。
1ヶ月後の来院時、4箇所あった深い潰瘍を伴う膿皮症に変化が現れます。
長期にわたり難治性であった膿皮症の潰瘍がふさがり肉芽が盛り上がってきます。
まだ下痢は続いていましたが、ご本人の表情は少し明るさが見られるようになりました。
毎日「喜びリスト」の作成を忠実に実行され今日の喜びを見つけることが楽しくなってきたと仰っていました。
それまで否定的なことばかり考えていたが、少しずつ、自分の喜びや生きがいについて考える機会が増え、それと共に生きる力が湧いてきたとのことでした。
3ヶ月後の来院時、初めて一人で来院されます。皮膚の潰瘍が浅くなり改善傾向が見られます表情も非常に豊かで、言葉数も多くなられました。
下痢もおさまり、自家製のスムージーや野菜ジュースを飲んでも下痢をしないようになりました。
そして何より、潰瘍がふさがり、皮膚科の主治医より長期に使ってきたステロイドの中止を提案されました。(Fig/3)
Fig.3 前胸部の潰瘍
ステロイド離脱後より体重も15kg減り、それまで引き籠もりがちだったのが積極的に外に出られるように変化を起こされました。(Fig.4)2017年5月現在、通院しながら経過観察中ですが、日に日に変化を実感され、毎日が楽しいと患者様ご本人からご報告をいただいています。
今後客観的データの変化も追っていく予定です。
このように、患者様が良くなっていかれることは医師として何より嬉しいことです。
この例を通して、みなさんにも是非知っておいていただきたいのは、誰にも「自己治癒力」というものが備わっていることです。
「細胞が喜ぶ環境作り」をすることで細胞が本来の仕事をし始めると自ずと「自己治癒力」は高まります。
「細胞が喜ぶ環境」を作るには、細胞小器官、特にミトコンドリアの活性を上げるためのビタミン、ミネラルなどの栄養素を十分補給し、さらに「気」を高めるために「得たい結果」をイメージすること。
「得たい結果」をイメージすることで良い「気」が流れ始めます。
良い「気」は、細胞に良い影響を与えます。遺伝子の発現をコントロールします。
エピジェネティクと呼ばれる新しい分野の科学ではあなたが何を考え、何を望んでいるのか。そのエネルギーを細胞は常に受け取っており、遺伝子に影響を与えていると言っています。
この例では、サプリメントも使ったものの患者様ご自身が、たとえ厳しい状況にあっても「喜び」に満たされ、「得たい結果」をイメージし、ご自身の自己治癒力を信頼されたと言うことが改善を促進させた最も力強い要因であったと思われます。
「病」を忌み嫌うのではなく私たちに様々なメッセージを送ってくれる「優しいメッセンジャー」であることを知り、病と闘うのではなく、耳を傾け、そのメッセージを受け取ることで、気がつけば、病が消えていたと言うことは珍しくありません。
このような気づきに至るまでにはその人にとって必要な時間はそれぞれですが、当院では、患者様がご自身の病のメッセージを受け取れるようにお手伝いができればと考えています。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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