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発達に偏りのある場合に有用な検査について
2017年3月 1日
近年、子どもの間で(もちろん大人でもありますが)、多動や不注意、自閉傾向など発達に偏りのあるケースが増えていると言われています。
特に日本では、以前は「発達障害」や「自閉症」と診断された場合、「療育」と呼ばれる教育コースを紹介されることが多くありました。この基本的な考え方の背景としては「自閉症」や「発達障害」は治らないものだという考え方に基づいています。
しかし、海外では事情は随分と違います。
特にアメリカでは、発達障害や自閉症の原因に関して、様々な側面から研究がなされています(もちろん日本でも多くの研究家たちがこの分野で日夜研究を続けています)。多くの研究の中で比較的支持を得ている考え方として、発達障害の発症要因として、
①遺伝的な要因
②環境要因
が複雑に絡み合っているとされています。
①では、例えば水銀などの有害重金属が体内に侵入した場合主に肝臓で解毒を行いますが、遺伝的に解毒を行う酵素の活性が低く、解毒に必要な物質の産生が低い場合があります。
また、ドーパミンと呼ばれる脳内ホルモンは私たちの「やる気」に関連するホルモンとして知られていますが、過剰に脳内に存在すると「多動」傾向が目立つことが知られています。
ドーパミンが適切に代謝され、ノルアドレナリンに変換されるとドーパミン濃度は低下しますが、この代謝酵素が遺伝的な要因により活性が低下している場合は、脳内のドーパミンの代謝が低下し、脳内でのドーパミン濃度が上昇することとなります。
②現代社会では、従来の自然に存在する水銀やカドミウムなどの微量の毒素に加え、産業廃棄物や工業用水などによる海洋汚染や大気汚染が問題となっています。
また保存料や着色料などの食品添加物などの体内に入ると少量ならば、肝臓による解毒作用を受けて主に糞便に排泄されますが、微量でも持続的に暴露されると、解毒能の限界を超え、体内に蓄積されることとなります。
【発達に偏りが目立つ場合に有用な検査】毛髪ミネラル・有害重金属検査 毛髪は皮膚や爪と同様に体内に蓄積した重金属などの毒素の排泄器官の一つです。
毛根に近い3センチの毛髪を一定量使用し分析することで、過去3ヶ月の体内に存在した重金属の量や、細胞の活動に必須であるミネラルのバランスを知ることできます。
特に水銀やヒ素、鉛、カドミウムなどの蓄積はミネラルの本来の働きを阻害し、慢性疲労や神経症状など様々な不調の原因となります。
尿中有機酸検査 尿中に排泄される様々な物質の代謝産物を測定することで、細胞内の代謝の活性度や遺伝子多型により活性の低下した酵素の存在を推測することが可能です。
具体的にはミトコンドリア機能低下の有無や腸内で異常増殖した悪玉細菌の産生する毒素の蓄積、そのほか脳内神経伝達物質のバランスを見ることでドーパミンやセロトニン代謝産物のバランスがわかります。
特に発達に偏りのあるお子さんの場合、腸内環境の乱れにより、ミトコンドリア機能の低下を伴うことも多く、非侵襲的な検査で比較的多くの情報が得られるため大変有用な検査です。
ペプチド検査 牛乳に含まれるカゼインや小麦に含まれるグルテンなどのタンパク質は、消化管内で消化される過程でそれぞれカゾモーフィン、グリアドーフィンと呼ばれるペプチドに代謝されます。
本来健康な腸管内ではこれらのペプチドはさらに細かく消化分解され小腸粘膜から吸収されることになります。
しかし、腸内環境の悪化に伴い、小腸粘膜上皮細胞に障害が起きると、カゾモーフィンやグリアドーフィンなどのペプチドのまま吸収され体内に取り入れられることとなります。
これらのペプチドは血液脳関門(BBB)を通過した場合、脳内では神経毒素として働き、多動やBrain Fog(集中力なくなりぼーっとする)などの原因となると言われています。
ペプチド検査では血液中に存在するグリアドーフィンやカゾモーフィンを調べることで、腸管からペプチドの状態で吸収されているか否かを推測することができます。遺伝子多型検査 「遺伝子多型」は様々な側面でその人の体質と関係することがわかっています。
特に発達に偏りが目立つケースの場合、神経伝達物質の関係する酵素の遺伝子多型が多く知られています。
例えば「やる気」や「達成感」などに関連するドーパミンを代謝するタンパク質や、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンを代謝するタンパク質などを作り出す遺伝子に変異が見られると、これらの神経伝達物質の代謝が阻害され、様々な神経症状を引き起こすこととなります。
そのほか、解毒能に関係する酵素や、アレルギーやうつなどとも関連のあるビタミンD受容体を作り出す酵素などの遺伝子多型も同時に調べることができます。
しかし、もしこの検査を受けていくつかの遺伝子多型を指摘されたとしても、それは決して「死刑宣告」ではありません。脆弱な遺伝子を知ることで、現在起こっている症状との関連を知り、よりきめ細やかな対応がピンポイントで可能となるため、むしろ恩恵も多くあることを知っておいてください。
また最近では「エピジェネティクス」という分野も進み、遺伝子が全てを支配するわけではないことも分かってきました。
遺伝子多型による脆弱性を、場合によっては「栄養」、場合によっては「心理状態」などが十分カバーし、何ら日常生活には支障のないケースは多くあります。
飽くまでも、様々な症状の原因を生物学的に理解する上で参考にはなるが、これが全てを支配するのではないことを知っておきましょう。総合便検査 便を採取し分析することで、腸内細菌のバランスのほか、腸内の炎症、消化酵素の量、免疫能状態など、腸内環境の乱れの原因を特定することができます。 当院では4月の発達支援外来開設に向けて準備を進めています。
当院では分子栄養学的なアプローチ以外にも心理学的なアプローチからもサポートできるようになる予定です。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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