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逆流性食道炎と低胃酸症
2016年12月 8日
最近ではテレビのCMなどでも逆流性食道炎に使う薬のプロモーションが盛んに行われ、「逆流性食道炎」という言葉を知る方も増えてきました。
食生活の欧米化に伴い日本人も胃酸の量が増え、胃酸が食道に逆流することで食道に粘膜障害を起こすというのが一般的な病態の解釈です。
本来、健康な胃は多くの胃酸を作り出す事ができます。この濃度はpH1-2とかなりの強酸で食物の消化には必要不可欠です。この強酸の胃液が食道にはダメージを与えることになります。
しかし、もちろんこれらのように胃酸の分泌が多く、胸焼け・逆流性食道炎を引き起こす場合もありますが、実は胃酸の分泌が低下してる低胃酸症により逆流性食道炎を引き起こしているケースも意外と多いことがわかってきました。
胃酸過多の場合
食事をすると胃酸が分泌されますが、食事と混ざることでpHが中和されます。十分胃酸による中和が行われると幽門輪が緩み食物を小腸へ送ります。
ところが、胃酸過多の場合は胃の酸性度が強いままで中和されることがなく、幽門輪が開かなくなります。そして胃内部の圧力が高まり逆流が起こります。
胃酸低下症の場合
酸の分泌量が少ない胃では、消化に時間がかかり食物は胃に長時間留まることになります。
そして食道と胃の間の弁(下部食道括約筋)が時間の経過と共に緩んだ時に胃の内容物が食道へ逆流する事になります。
胃酸過多に比べて胃酸の量は少なく、食物を消化するには十分な濃度の酸ではありませんが、本来胃酸に晒されることのない食道にダメージを与えるには十分な濃度の酸です。
多くの場合、医療機関を受診すると制酸剤を処方されますが、確かに内服すると一時的に胸焼けはすっきり解消します。
しかし問題は胃酸の出過ぎではなく、不足ですので、ここで制酸剤を内服するとさらに胃酸は抑制され、悪循環に陥ります。
このような方は、胃酸分泌を促すサプリメントやレモン水などを食事と一緒に摂ると胸焼けを起こしにくくなります。
本来胃酸は栄養の消化に必要な要素ですから、制酸剤を毎日飲むような方は栄養素の吸収ができなくなります。また、胃酸による殺菌作用が低下するために小腸内で最近が異常増殖しSIBO(小腸内細菌異常増殖)という病態になり、腹部不定愁訴を訴える方もいらっしゃいます。
低胃酸症及び制酸剤により不足する栄養素- カルシウム
- マグネシウム
- 亜鉛
- 鉄
- などのミネラル
- ビタミンB12
- たんぱく質
- アミノ酸
低胃酸症と関係のある病気
- 貧血
- 骨粗鬆症
- ホルモンバランスの異常
- 精神障害
- 神経障害
- SIBO
最近の研究では、プロトンポンプインヒビターを呼ばれる制酸剤を飲んでいる人は脳梗塞の発症率が高まるという報告もあります。症状が緩和しているときは長く内服を続けるのではなく、薬を一旦やめてみることも必要です。
また制酸剤を長期間使用している方で、貧血や骨粗しょう症を伴う方は、制酸剤による低酸症の可能性があります。きになる方は一度ご相談ください。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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