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Dysbiosis(腸内毒素症)①
2016年6月21日
うちは消化器内科を専門にしていますが、診察室を訪れる患者さんたちの症状は、私が研修医だった20年前に比べると様変わりしてきているように思います。
20年前当時は、多くの方は酸の逆流症状や出血性潰瘍、憩室炎、胆石発作、そして多くはありませんが大腸がんや胃がんなどで来院されていました。
これらの疾患は、内視鏡やエコー、CTなどの標準的な検査で確認でき、診断のつきやすい疾患です。ひととおり検査をすれば多くは診断できたのです。
しかし、最近外来に訪れる人の中には、なかなか標準的な検査では診断のつきにくい人が多くなっています。中には何軒も病院を回ったけど「ストレスのせい」とか「検査では異常ないので気のせいです」と言われてあまり相手にしてもらえず、うちにたどり着く方もいらっしゃいます。
私たちの体というものは非常に良くできた発信装置でもあり、何かしらの症状は私たちに何か異常があることを知らせようとするサインです。私たちの体の声をちゃんと聞くことでもっと根本的な対処法に気づかされることも多いのです。
様々な訴えのある患者さんには、他で検査を受けていない場合はまず一般的な消化器内科的な検査(採血以外に内視鏡検査や超音波)を一通りします。その上で特定の疾患が診断しえない場合には、鑑別診断のひとつとして"Dysbiosis(腸内毒素症)"を念頭に追加の検査が必要かを考えていきます。
Dysbiosisは腸内細菌叢のバランスが乱れたことにより様々な不快な症状が出現している状態を指します。ここでいう症状とは、腹痛や腹部膨満感、臭いオナラ、食物不耐症、慢性疲労、Brain fog(頭に霧がかかったような感じ)、過敏性腸症候群、説明のつかない腹部不快感などです。
しかし、Dysbiosisは内視鏡やエコーなどの従来の検査では診断できないので、中には「異常がありません」と言われて心療内科に紹介されるケースもあります。
Dysbiosisの原因には
・抗生剤
・PPI、H2ブロッカー(制酸剤)
・非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)
・ステロイド剤
・化学療法(抗がん剤)
・ピル
・人工甘味料
・アルコール
・過剰な砂糖や脂質摂取
・食物線維不足
・感染症
・ストレス
などが考えられています。
次回以降は診断や対処法についてです。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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