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糞便細菌叢移植(便移植)

2016年5月21日

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慢性の炎症性腸疾患や悪玉細菌であるクロストリジウム・ディフィシルの異常増殖による腸炎に対して今、注目されている治療法の一つに「糞便細菌叢移植(便移植)」があります。

細菌叢とは「腸内フローラ」とも呼ばれ、腸内に棲息する腸内細菌群の総称ですが、違う種類の細菌群が「村」のように相互的に作用し合いながら働き、宿主である人間にとっても必要なビタミンBなどの栄養素を作っています。

いわゆる善玉菌と言われるようなビフィズス菌や乳酸菌や、悪玉菌と呼ばれるクロストリジウム・ディフィシル菌などが知られていますが、その種類は健全な人ほど多いと言われ、500種類以上、菌数は100兆個以上とされています。

腸内環境にとって大切なのは善玉菌の数が多く、クロストリジウム・ディフィシルやカンジダなどの異常増殖がないことですが、上記の疾患では、これらのバランスが崩れている事が知られています。

便移植では、健全な腸内フローラを持つ人の糞便を、腸内環境が乱れた人の大腸に散布し、腸内環境の改善を図ろうとするものです。

特にクロストリジウム・ディフィシルが異常増殖して起こる腸炎に対しては、その有効性が確認されており、現在潰瘍性大腸炎など他の疾患でのトライアルが国内の大学病院を中心に行われていますが、クロストリジウム・ディフィシル腸炎に比べ成績は劣るものの、中には改善が認められる例が少なからずあります。

これらの疾患の治療戦略の基本は腸内環境を整えることであり、食事療法は欠かせませんが、便移植は治療手技が比較的簡便なことと、大きな副作用がない事より、食事療法を含む様々な治療法に反応しない例では、一度試してみる価値のある治療法と考えています。

また、発達障害や自閉症の方の腸内環境は乱れている事が多く、便移植による治療が期待されるところです。アメリカではすでに実験的に行われている施設が増えています。

この治療の恩恵を受ける人は多いと考えられ、今後の発展を期待したい治療法です。

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