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腸脳相関
2016年5月22日
ストレスと腸がいかに密接に関係しているかは多くの人が経験上知っているところですが、科学的な裏付けを示す論文も近年増えています。
今回は今注目の「腸脳相関」とそのメカニズムについて書いてみます。
●脳→腸
脳がストレスを感じると迷走神経を介して腸壁の神経系にシグナルが送られます。ストレスが強すぎたり、長く続いたりすると胃が痛くなったり、下痢が続き体重が減る人もいます。旅行に行くと便秘になるという人もこの迷走神経からのシグナルが関連しています。
また、同時に神経を介さない視床下部ー下垂体ー副腎(HPA軸)の経路も関連しています。これはホルモンによる調節系で、脳でストレスを感じると副腎皮質より抗ストレスホルモンであるコルチゾールを分泌させます。
サルの実験では、生後6ヶ月の子どもザルを母親から分離すると3日後の糞便中乳酸菌が著しく減少しました。つまりこれは有害なストレスを加えて抗ストレスホルモンが亢進すると、腸内環境が悪化するとういうことです。
さらに、ストレスが加わり交感神経優位になると、ノルアドレナリン感受性の強い悪玉細菌が増えることも確認されています。
●腸→脳
次に腸内環境の情報を中枢神経系に伝達するのに神経系を介する経路と免疫細胞のを介する経路が確認されています。また、腸内細菌により生成される生理活性物質の役割も重要です。
神経系では、迷走神経と脊髄求心性経路を介し、悪玉細菌の細胞壁を構成するリポ多糖(LPS)に反応して中枢に情報伝達されます。
また、LPSに反応してマクロファージや樹状細細胞などの免疫系細胞が炎症性サイトカインを誘導します。
さらに腸内細菌が生成する短鎖脂肪酸、GABA、5-HTP(セロトニンの前駆物質)は神経系に対して直接あるいは間接的に影響を与えます。
5-HTPは脳血流関門を通過し脳内で、感情の安定に関与するセロトニンに変換されます。このように脳と腸、そして腸内細菌は、今分かっているだけでも密接に情報交換を行っています。
特にストレス性の疾患の治療には、腸内環境を整えることも併せて行うことが重要です。
当院では、ストレスが関与する様々な疾患に対してカウンセリングなどによる心理療法に加え、多くのケースの背景にある腸内環境の乱れにも注目し、食事の改善やプロバイオティクスも使い腸内環境を整えます。
うつなどの傾向のある場合、まずは食事を見直し腸内環境を改善させることが重要です。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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