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トランス脂肪酸
2015年11月10日
先日、某高級デパートのカフェでお茶を飲んだ時のこと。同席していた家族がコーヒーを注文したところ、ミルクの代わりに「フレッシュ」が出され愕然としました。ミルクの害については今回は置いておくとして、トランス脂肪酸についての備忘録です。
2015年6月にアメリカ食品医薬品局(FDA)は、トランス脂肪酸のの食品添加を今後3年間で全廃するという方針を発表しました。かねてよりトランス脂肪酸の有害性が指摘されながらも、2000年代にはいり、世界全体でトランス脂肪酸排除の動きが活発化し、FDAのトランス脂肪酸全廃の動きへとつながりました。
一方、日本ではいまだトランス脂肪酸に関する義務規制は全く行われておらず、世界の動きには大きく取り残されている感があります。
トランス脂肪酸は、常温で液体の植物油に部分水素添加を施し、マーガリンなどの個体の油を製造する際に生成されます。世間に存在するトランス脂肪酸はほぼ人工的に生成された工業由来のもので占められており、マーガリンの他、ショートニング、ファットスプレッド、加工油脂、またこれらを用いた加工食品に含まれます。菓子類やコンビニのパン類にはまず含まれていると考えてよいでしょう。
WHOは、トランス脂肪酸は冠動脈性心疾患のリスクは確実であると認めていますし、糖尿病、前立線がん、乳がん、認知症、うつなどと関連があるとされる論文も2000年以降増えてきています。
トランス脂肪酸は、まだ機序は不明ながら、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を増加させ、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)を減少させます。
また、大量のトランス脂肪酸が細胞膜に存在すると、細胞膜が正常に作られないだけでなく、EPAやDHAが担う細胞間のシグナル伝達も正常に行われない可能性が高いとされています。
厚生労働省の見解としては「日本人の平均的なトランス脂肪酸の摂取量は、WHOの提示するトランス脂肪酸許容量を下回っている」として、直ちに禁止する動きは今のところありませんが、トランス脂肪酸の害を示す論文がこれだけ増え、また海外での動きを考えるとトランス脂肪酸は「少なければとっても大丈夫」というのは大変リスキーで、「摂取してはいけない」と考える方が妥当だと思われます。
当院の外来にいらっしゃる患者さんでも、トランス脂肪酸をかなりとっていらっしゃる方をお見かけします。そんな方には時間をかけて、その危険性についても説明し、少しずつできるところから減らしていっていただくようサポートしています。 Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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