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食物不耐症について

2024年9月18日

食物不耐症は一見食物アレルギーに似た症状を呈しますが、実際は免疫反応による症状ではなく、消化菅などの問題により食物を消化できないがために起こる主に消化器症状を呈する状態のことです。
食物不耐症は食物過敏症とも呼ばれ、食物不耐症があると特定の食品を分解、消化できず、ガス、下痢、その他の問題が発生します。これは腸が特定の食物に敏感で、それらを消化管内で処理できないことを意味します。これらの食品を食べると、ガス、下痢、腹痛などの不快な症状が現れることがあります。
食物不耐症や食物過敏症の諸症状は確かに不快でQOLを低下させますが、食物アレルギー、特にアナフィラキシーなどとは違い直ちに生命を脅かすものではありません。
今回は米国のクリーブランドクリニックが発信する健康関連の記事にアップされた「Food Intolerance(食物不耐症)」という記事についても触れながら腸内細菌の関与についても書いてみます。

<食物不耐症と食物アレルギーの違い>

食物不耐症 化器システムの反応による症状。
特定の食物を分解(消化)できないときに発生。
胃のむかつきなどの症状を引き起こすが、生命を脅かすものではない。
食物が消化管を通過する際、食後数時間以内に症状が現れます。
少量の食品を食べた場合には症状が出ないこともある。
食物アレルギー 免疫系の反応による症状。
免疫系が食品中のタンパク質やその他の成分を外敵と誤認したときに発生。免疫システムは、外敵と戦うために免疫グロブリン E (IgE) と呼ばれる抗体 (タンパク質) を放出する。
じんましんや腫れ、息切れ、喘鳴などのアレルギー反応を引き起こす。
アレルギーを引き起こす食物を少量でも摂取すると、数分以内に症状が現れる。
アナフィラキシーと呼ばれる重度の生命を脅かす反応を引き起こす可能性がある。この場合エピネフリン治療を施さなければ致命的になる可能性があり、注意が必要。

<最も多い食物不耐症のタイプ>

よく知られている食物過敏症には次のようなものがあります。

乳糖 乳糖不耐症の人は、牛乳や乳製品に含まれる糖である乳糖を分解するのに十分なラクターゼ酵素を生成しません。この食物不耐症が最もよく知られており、日本人の成人の約80%は乳糖不耐症とも言われています。
ヒスタミン ヒスタミンは、チーズ、パイナップル、バナナ、アボカド、チョコレートなどの食品に含まれる天然の化学物質です。
赤ワインや一部の白ワインにもヒスタミンが含まれています。ヒスタミン不耐症の人は、この化学物質を分解するのに十分なジアミンオキシダーゼ酵素(DAO)を生成できません。
グルテン グルテンは小麦、ライ麦、大麦に含まれるタンパク質です。グルテン過敏症は、自己免疫疾患の一種であるセリアック病とは違う疾患で、セリアック病の場合はグルテンが小腸にダメージを与えます。非セリアックグルテン過敏症の場合はグルテンを消化するのが難しい状態を指します。

<食物不耐症の症状と原因>

食物不耐症の人は、消化器システムが特定の食品や成分を分解するために必要な酵素を十分に生産できていないことがよくあります。しかしなぜ一部の人が食物不耐症を発症するのかについてのメカニズムはまだよくわかっていません。
セリアック病やクローン病、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)のような特定の疾患があると食物不耐症/過敏症をしばしば合併することがあります。また過敏性腸症候群(IBS)では80%の人が食物不耐症が合併するという研究もあります。

<食物不耐症の主な症状>

食物不耐症の症状には次のようなものがあります。

  • 腹部(お腹)の痛み
  • 下痢
  • ガスと膨満感
  • 頭痛または片頭痛
  • 胸焼け
  • 吐き気
  • 胃のむかつき

上記のように主に消化器症状を呈します。

<食物不耐症の診断方法>

乳糖を使った水素呼気検査では乳糖不耐症を検出できます。
乳糖摂取後、数時間にわたって 20分(または30分)ごとに風船のような容器に息を吹き込みます。乳糖不耐症の場合、未消化の乳糖により呼気中に高レベルの水素が発生します。しかしこれまでのところグルテン過敏症やヒスタミン不耐症(HIT)の簡便な検査はありません(欧米ではHIT診断に血清中のDAO濃度や遺伝子多型を測定する検査が活用されます)。アレルギー検査では食物アレルギーは検出できますが、食物不耐症は検出できません。また遅延型アレルギー検査とも呼ばれるIgG抗体を測定する検査でも食物不耐症を診断することはできません。
食事と症状を追跡するために食事日記をつけるようにすることが役に立つ場合があります。
2~6週間、食事から特定の食品を取り除く除去食を試してみて、この間に症状が消え、再びその食べ物を食べ始めると症状が再発する場合は、食物不耐症の存在が疑われます。

<食物不耐症の治療>

食物不耐症の多くの場合、少量の食物を摂取しても症状が全くないか、あったとしても非常に軽微なことがあります。症状が発生した場合は、制酸薬や下痢止めなどが有用なことがあります。
乳糖不耐症の人は、乳糖を含まない牛乳や乳製品を選ぶことで症状抑えることが可能です。乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)はサプリメントとしても入手可能であり、乳製品を摂取する前にこの消化酵素を摂取することで乳糖を分解することができます。
(そのほかに腸内細菌の乱れ(dysbiosis)も合併することが多く、これを整えるアプローチについては後述します)

<食物不耐症の合併症>

乳糖不耐症の人が乳製品を完全に断つと、十分なカルシウムとビタミンDを摂取できなくなる可能性があります。胃を痛めることなく乳製品を摂取するには、サプリメントを摂取するか、市販のラクターゼ酵素を使用することができます。
グルテンを含む製品の摂取を控えている人は、健康に重要な食物繊維やビタミンBなどのその他の栄養素を食事から確実に摂取するために、新鮮な野菜、果物、グルテンフリーの全粒穀物をもっと食べる必要があるかもしれません。

<生涯続く食物不耐症>

ほとんどの人は、消化器系の問題を引き起こす食べ物を減らすか排除すれば、ある程度症状をコントロールすることができます。
また、食物不耐症による症状は確かに不快ではありますが、食物アレルギーのような生命を脅かすことはありません。

<受診が必要なタイミング>

次のような症状が発生した場合は、早めに医療機関にご相談ください。

  • 極度の腹痛または下痢
  • 食べ物に対する重篤な反応
  • 原因不明の体重減少

など

<食物不耐症と腸内細菌>

前回のブログでも書きましたが、腸内細菌の多様性の低下が食物不耐症を増悪させる可能性があります。本来自分の持つ消化酵素以外に腸内細菌が持つ消化酵素を活用して私たちは食物の分解・消化を行えています。
つまり私たちが食べたものをわたしたちの消化酵素と腸内細菌が持つ消化酵素をハイブリッドで活用し、それらが産生した代謝産物(ビタミンや短鎖脂肪酸などを含む栄養素)を私たちは利用しています。
IBSやSIBOの背景には腸内細菌の多様性の低下(dysbiosis)の関与が指摘されていますが、私はこのdysbiosisにより潜在的にあった食物不耐症の症状が顕在化しやすいのではないかという仮説を立てています。
腸内細菌の多様性の低下(dysbiosis)に伴う様々な症状に対して、腸内フローラ移植(NanoGAS®︎-FMT)なども含め腸内細菌の多様性を増やすための治療を行うことで、IBSの症状が改善した例が複数あることを考えると、腸内細菌の多様性の復活は食物不耐症を改善させている可能性があります。これは代謝のリレーを担っていた菌がいなくなっていた状況に、外から新しい細菌が入ってくることで代謝のバトンリレーが復活し、それまでうまく消化できなかった食材に対しても対処が可能になるのではないかと考えています。
参考URL(clevelandclinic.org)》

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